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定刻発車 読書レビュ

  • 鋪田博紀

定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか?(三戸 祐子著:新潮社刊)

電車が2から3分遅れるだけで腹を立てる日本人。なぜ私たちは"定刻発車"にこだわるのか。その謎を追うと、江戸の参勤交代や時の鐘が「正確なダイヤ」と深く関わり、大正期の優れた作業マニュアル、鉄道マンによる驚異の運転技術やメンテナンス、さらに危機回避の運行システムなどが定時運転を支えていた!新発見の連続に知的興奮を覚える鉄道本の名著。交通図書賞・フジタ未来経営賞受賞。

世界にも類を見ない一分と違わない日本の鉄道の発着システムはどのように構築され、何故維持されてきたか。

その答えを、ひとつには「江戸時代は鐘を使った時報システムがあり、人々はかなり正確な時間感覚をもって生活していた。」「馬車を使った交通網がなかったため、人が歩ける範囲で宿場が整備され、それがそのまま駅になり町を作った。つまり駅間が短いという日本の鉄道の特徴となり、短い駅間は運行時間の調整が調整しやすいという利点となった」などと江戸時代にさかのぼって「定時発車」のルーツを見出すなど、斬新な内容となっています。

また車内でのマナーについても「最近女性の化粧が問題となっているが、昭和30年代には車内で授乳している女性が見受けられた」と指摘し、公共空間としての車内マナー・モラルにも触れられています。

章毎に内容が重複していたりして多少冗長な面もありますが、定時発車を材料に、日本社会を描き出すという試みは一応成功しているのではないでしょうか。

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