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雰囲気で変えられる歴史

  • 鋪田博紀

沖縄戦を巡る教科書検定に動きがありました。

朝日新聞は、

asahi.com:沖縄戦の集団自決、検定意見を事実上修正 渡海文科相 - 社会

 沖縄戦の「集団自決」をめぐり、高校日本史の教科書検定で「日本軍の強制」が削除された問題で、渡海文部科学相は26日、教科書会社6社から出されていた訂正申請を承認することを明らかにした。日本軍の命令が直接の原因だったという記述は避けつつ、「日本軍の関与」や「戦中の軍の教育」などによって住民が自決に追い込まれたと記しており、「集団自決が起きたのは、日本軍の行為が主たる原因」と読める内容になった。
今回の訂正申請は、今春公表された検定意見に沖縄側が激しく反発したこともあり、渡海氏が「申請があれば真摯(しんし)に対応する」と表明していた。「日本軍の強制性」を認めるかどうかが焦点だった。文科省は検定意見の撤回はしないものの、内容的には事実上、修正した結果となった。
渡海氏は訂正申請が11月初めに出されたことを受けて、諮問機関の教科用図書検定調査審議会(検定審)に検討を要請。検定審日本史小委員会は25日に訂正申請を承認する報告をまとめた。
日本史小委は、沖縄戦や軍事史の専門家9人に意見を求めたうえで、(1)集団自決が起きた要因として、軍の関与は主要なもの(2)軍命令で行われたことを示す根拠は確認できていない(3)住民側から見れば、自決せざるを得ないような状況に追い込まれたとも考えられる――という「基本的とらえ方」をまとめた。
この「とらえ方」に沿って、教科書会社に訂正申請の根拠となる資料の提出や説明を求めた。その結果、三省堂、実教出版、清水書院、第一学習社、東京書籍の5社が「自決を強要された」「集団自害と殺し合いを強制した」といった直接的な表現を取り下げ、「日本軍の関与」や「米軍の捕虜となることを許さないなど指導」「(住民の側からみて)集団自決に追い込まれた」との表現に変えて再申請した。山川出版社だけは、集団自決の事実関係について修正したが、背景や要因には触れなかった。

と報道、読売も概ね同様の内容でしたが、朝日と対立する産経新聞は、

沖縄知事「まずますの結果」 集団自決訂正申請 - MSN産経ニュース

 集団自決の記述を巡る検定問題について、沖縄県の仲井真弘多知事は26日、「沖縄の声が口火となって、まずまずの結果となった」と大筋で評価する見解を述べた。
また9月の県民大会実行委員長を務めた仲里利信県会議長らは、都内で会見し、「集団自決の記述がほぼ復活しており事実上、検定意見は消滅した。100点満点なら80点だ」とし、おおむね要望は取り入れられたと述べた。仲里議長らは「軍の強制」が削除されたことは大きな問題としたが、「処刑に近い“強制集団死”などの記述が認められた」などとした。
一方、教科書会社では、承認された記述について東京書籍は「ある程度趣旨は通せた」と評価したが、「沖縄県民の感情の理解不足を含め、今回の対応は問題意識が足りなかった。異例な手続きだったが」と振り返った。
清水書院は「どうすればいいか言ってくれという感じだった」と文科省の方針転換を批判。「現行制度では記述の後退もやむを得ない」とした。

との記事のほか、あわせて3本の記事を掲載しています。

大きな声をだしたもの、より大粒の涙を出したものによって歴史を書き換えることができるということが証明されてしまいました。このことが後々にどれほど大きな害悪をもたらすのか。あらたな証言が出てきた今、軍による強制があったかなかったか時間をかけて丹念に検証しなければいけないのではないでしょうか。

私自身はどちらの側に立つというより、雰囲気で歴史やそれを教える歴史教育がいとも簡単に変更されるということに恐ろしさを禁じえません。政治的決断とはそう簡単に行使してはいけないことだと思います。

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