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技術の進化に採点システムが追いつかない? - 女子フィギュア

女子フィギュアスケートは予想通り(?)、前人未到のショートプログラム(SP)78.50点、フリースケーティング(FS)150.06点、総合得点228.56点を叩きだしたキム・ヨナ選手(韓国)が圧巻の演技で金メダル。これまた、女子選手としては前人未到のトリプルアクセル(3A)をSPとあわせ3回も飛んだ浅田真央選手の銀メダル。母を亡くした悲しみを超えてジョアニー・ロシエット選手(カナダ)が銅メダルという結果になり、物語としてはこれ以上完璧なストーリーはありませんでした。

また、鈴木明子選手も印象に残る素晴らしいプログラムで入賞したほか、アリョーナ・レオノワ選手(ロシア)やラウラ・レピスト選手(フィンランド)、長洲未来選手(米国)らがキスアンドクライでガッツポーズで自己最高の滑りを喜ぶなど、感動的でした。本当に素晴らしかったと思います。

一方で、本来ならメダル候補の筆頭であったカロリナ・コストナー選手(イタリア)など、今シーズンの不振そのままに、五輪で全く実力を出せずに終わった選手も多くいて、ここにも物語がありました。

その反面、トップ選手と他の選手の点の開きには、ある種の絶望感を感じたのは私だけではないでしょう。

「ミスはあったにせよ、3Aを2回も決めたのに」「ノーミスだったのにあの点数?」という声はネット上でも見られました。

もともと3Aは、国際大会で成功した選手は、伊藤みどり選手、あのトーニャ・ハーディング選手(米国)、中野友加里選手ら数名しかおらず、事実上、現役選手では、中野選手と浅田選手だけだと思います。

おそらく、3Aは女子選手の身体能力からいって本来飛べるはずのないジャンプで、かつ、リスクが圧倒的に高いので、限られた要素の中からプログラムを組み立てるとすれば、3回転のコンビネーションジャンプをいれるほうが常識的なのだと思います。

そして、ヨナ選手が成功させたトリプルルッツ+トリプルトウループや安藤選手が飛んだトリプルルッツ+トリプルループなどの、高度な3回転+3回転も女子選手で成功しているのはごくわずかです(実は安藤選手は世界でも高度なジャンプを飛び分ける数少ない選手のひとりです)。

また、ジャンプ以外にも、現在の女子選手のスピンやステップ、スパイラルもレベルが上がっており、伊藤選手が女子で初めて3Aを成功させた時もそうだったのかもしれませんが、高度な技術をもつ女子選手の登場に、採点システムが追いつかないという面があったのかもしれません。

また多くの五輪種目がそうであるように、競技は選手と審判だけで成り立っているものではありません。そこには観衆やテレビで観戦する人々の存在が欠かせません。今回のような、観衆の受けた感覚・感動と実際に出る点数との埋めがたいギャップというのは、これからその競技が発展していく上ではよいことではありません。

そういった意味では、男子とは別の面での課題が見えた女子フィギュアスケートでした。

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