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尖閣諸島沖で起きた中国漁船が海保巡視船に衝突するという事件が起きて一か月

  • 鋪田博紀

9月下旬に自民党本部から「尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に関する特別街頭遊説を全国で行おう」と依頼があり、10月1日に富山駅前で遊説を行いました。

あちこちで、「自民党の議員としてどう思う?」と見解を求められることも多く、街頭でお話ししたことを含めて考えをまとめる意味で少し書いておきます。

まず、結果的に良かった点は...

今回の事件で、国民に領土・領海あるいは国境というものについて関心が高まったことです。特に、竹島や北方領土ほど注目されてこなかった沖縄県の尖閣諸島が注目を集めた点は大きいと思います。

また、船長を釈放した後も中国政府が高圧的な態度に臨んだことで、中国の覇権主義的な姿勢が、周辺諸国や関係国の間で印象付けられたことは、日本にとって結果的に失政が救われた部分があると考えられます。

さらに、米国政府がやや曖昧な表現ながら、尖閣諸島が沖縄の一部として日本に返還されたこととに言及し、日米安保の対象地域であることを表明した点は、今後の紛争解決の客観的な証拠の一つとして、悪くはない材料だと考えられます。

問題点としては...

国境を抱える地域の住民から不安の声が起きており、これを受けて全国の自治体から政府に対し領土・領海を守るためのしかるべき措置を取るよう求めた意見書の提出が相次いでいます。

一方で極端なナショナリズムに走ることが若干ではありますが心配されます。「すぐに自衛隊を出せ」「尖閣諸島に基地を作れ」という意見も聞きました。

戦争状態にある場合を除いて各国が国境に軍隊を置かずに国境警備隊や沿岸警備隊(日本の場合は海上保安庁)といった準軍事組織・警察組織を置くのは、小競り合いが直ちに軍事衝突とならないための知恵であります。竹島を占拠しているのも建前上は軍ではなく警察組織です。

仮に自衛隊を出しても彼らには犯罪者を逮捕できる法的権限がないので、追っ払うことしかできません(これについては野党が法整備を検討を始めた模様)。

また、政府の対応についてはどうか?

ビデオが公開されていない状況では何とも言えませんが、ある意図をもって体当たりしてきたのか?あるいは巡視船が深追いして追い詰められてとっさに体当たりしたのか?

これまでは追っ払うことで、日中間の政治問題化を避けてきた基本方針(それも弱腰と言えますが)から一転、逮捕という結果になりました。巷噂されるように、官邸との外交方針のすり合わせもないまま当時の前原国土交通大臣の指示により威勢よく逮捕に踏み切ったところで、官邸が大慌てしたのか?

警察(ここでは海上保安庁)とチンピラ(中国漁船)の追跡劇のうちは外交問題にはなりませんが、一旦司法の場に持ち込まれれば、チンピラの親分(中国政府)だって黙っているはずはありません。なにせ、尖閣諸島は俺の縄張りだと言い出しているのですから。

国内法で粛々と言ったって、チンピラの親分の世界の掟と我々の世界の法律は全く別物。話が通じるわけがありません。結果として、現場である海上保安庁と那覇地方検察庁にしわ寄せがしてしまいました。

この構図は、政府が決断しなければいけない政治課題を地方選挙の結果に委ねた結果、泥沼にはまってしまった基地移設問題との共通点を見る気がします。また、税源の見通しもないまま突っ走ってしまったバラマキ政策との共通点も見られます。

党の綱領もない政党がいかに危険か、右左の両極端な思想・信条を持っている方々が政府を構成した場合の危うさが、はっきりとわかりました。

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