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蘭乃はな、最後のショー作品『ラスト・タイクーン/TAKARAZUKA ∞ 夢眩』 - 宝塚歌劇花組東京公演

ロビーの公演パネル
ロビーの公演パネル

宝塚歌劇花組東京公演『ラスト・タイクーン/TAKARAZUKA ∞ 夢眩』を連休中に観劇しました。贔屓のトップスター蘭寿とむさんの退団公演ということもあり、宝塚大劇場で二回、東京宝塚劇場で四回も観たのですが、蘭寿さんについてはまた後日書くとして、今回はその相手役である蘭乃はなさんについて。

本公演は、蘭寿さんの退団公演であると同時に、蘭蘭コンビと称される、蘭寿とむ・蘭乃はなコンビの見納め。そして、6月の『ベルサイユのばら―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』、11月の『エリザベート』といったショー作品がない一本物と言われるミュージカルもって退団されることが発表された、蘭乃さんの最後のショー作品でもあります。

以下、マニアックな内容なので、興味のない方はスルーしてくださいm(__)m

「ベルサイユのばら」以前は、娘役がアイドル的な存在で男性ファンも多かったといいます。

現在では、娘役OGでは黒木瞳、壇れい、純名里沙さんらが有名ですが、加茂さくら、八千草薫、乙羽信子、淡島千景、新珠三千代、有馬稲子、朝丘雪路といった大女優さん達も宝塚娘役OGです。100周年を迎える宝塚ですが、更なる発展のためにも娘役の外部露出などによる男性ファン増強に力を入れてほしいものです。

さて本題に戻します。

今回のミュージカル『ラスト・タイクーン』ではキャサリン・ムーア/ミナ・デービスという実質3役を時間の制約もあり十分演じ分けできなかった部分はありましたが、ミナ・デービスとなってからは、持ち味のキュートさや現代的なお嬢さん役がぴったりでした。また、蘭寿さん演じるモンロー・スターがダンスで口説くシーンはやはりこのコンビならではの憎い演出。演出家ならやはり踊らせたくなるダンサーコンビです。

同時上演のショー『TAKARAZUKA ∞ 夢眩』は蘭乃はなさん最後のショー作品でした。見どころはバケーションのマーメードの姿で、これはもう眼福。また、蘭寿さんとの王様の剣の場面のしっとりした王道ダンス、そして、二人のラストダンスとなるスモークの中でのデュエットダンスはとても自然で美しく、最後のリフトは、これが見納めかと思うと目頭が熱くなりました。

初めて蘭乃はなさんの舞台を観たのが、蘭寿とむさんのトップお披露目公演となる『ファントム』(2011年6月から9月)でした。待ちに待った蘭寿さんの晴れの舞台を観に行ったのですが、蘭乃さんの可憐な舞台姿に心を奪われてしいました。

観劇前は、学年差が十年もあり、大人の男役像が持ち味の蘭寿さんとは合いそうにないと思われた舞台でしたが、少女性と少女ゆえのある種のエロチズムが同居する不思議な娘役像が、以外にも蘭寿さんとぴったり合っていました。

フィナーレのデュエットダンスでは、少しはにかみながら踊っていたようにも見えましたが、ダンサーとして定評のある二人の息が合った素晴らしいものでした。

続く全国ツアー『小さな花がひらいた(原作は山本周五郎の短編小説「ちいさこべ」)』(2011年10月から11月)では、自らも江戸の大火で焼け出されながらも、おなじ境遇の孤児たちの面倒を見ながら自身も成長してゆくけなげな町娘、おりつを熱演。同時上演されたショー『ル・ポァゾン 愛の媚薬II』では大人の男役の色気を発散しまくる蘭寿さんに負けないショースターぶりを発揮。ただし、この作品だけは日程が合わずDVD鑑賞なのですが...

明けて2012年1月から3月のトルストイ原作ミュージカル『復活』では、貴族の屋敷の可憐な奉公人の少女が主人公の軽はずみな行動から娼婦に転落、殺人の濡れ衣でシベリア送りにされるという過酷な半生を送るヒロインのカチューシャを熱演。

幕開きで見せた、囚人たちに混ざって腰縄に繋がれながら凄む立ち姿は迫力満点。その後の法廷の場面でのダンスによる素晴らしい心象表現は、この作品以降も、蘭寿とむ・蘭乃はなコンビの特徴になりました。

同時上演のショー作品『カノン』では、タンゲーラという場面での怪しいダンスや、赤い月の下で蘭寿さん達男役の吸血鬼の群舞に混ざって白いドレスでのキレのあるダンスが印象的。こういった狂気をはらんだダンスも蘭乃さんの持ち味です。

同年4月から5月の全国ツアー『長い春の果てに/カノン』では、お転婆ぶりで主人公を翻弄するエヴァを熱演。彼女の現代的なキャラクターにはまりました。

同年7月から10月のミュージカル『サン=テグジュペリ』は誰でも知っている「星の王子様」が原作。ヒロインのコンスエロ役では持ち味が活かせていない気もしましたが、蘭寿さん演じる主人公サン=テグジュペリにプロポーズされるシーンは長めのタンゴダンスで表現され、ここでの二人の官能的で濃厚なダンスや、サン=テグジュペリの飛行の無事を祈るシャンゴの情熱的なダンスシーンは見事でした。

今作品では二役を演じていて、劇中劇のような感じで、不時着したサン=テグジュペリの前に現れた星の王子様役がまるで絵本から抜け出したようで可愛い。同じように壮一帆さん演じるキツネとの出会いのダンスと歌のシーンも、壮さんの魅力も加わり大変ほほえましいものでした。

宝塚GRAPH2012年10月号
宝塚GRAPH2012年10月号

同時上演されたショー『CONGA!!(コンガ)』は、宝塚歌劇にとっても蘭寿とむさんにとってもショーの代表作となる傑作。

写真の左上の「真実の愛」は、蘭の花の中に蘭寿さんと蘭乃さんの二人がおしべとめしべのようにポージング。それはそれは、客席からため息が漏れるほどの美しさ。また、音楽の天使の場面は観ているこちらが赤面してしまうかわいらしさ。『満天星大夜總会』で伝説の娘役花總まりさんの演じた「HANA-CHAN」を思い出しました。

同年11月から12月、蘭寿とむコンサート『Streak of Light -一筋の光...-』では、狂気をはらんだ人形のダンスや、リベルタンゴでの妖艶なダンスが見ものでした。ちなみにこのコンサートの第2部での月央和沙さん演じるオネエキャラのダンス教師は花組ファンには伝説となりました(笑)

翌2013年2月から5月の『オーシャンズ11』では、現代的な大人の女性を好演。また、アダムとイブの場面での、蘭寿とむさん、望海風斗さんとの心象表現のダンスシーンは見事。ダンスの持ち味が合うトップコンビならではの名シーンでした。

同年6月から7月は、話題のゲームを原作にした『戦国BASARA-真田幸村編-』。ヒロインいのり役はキュートで彼女のはまり役。ただキュートなだけでは無く、可愛い表情の陰に深い悲しみを背負い愛のために死んでいく造形が感動的でした。

同年年8月から11月は、『愛と革命の詩(うた)-アンドレア・シェニエ-』で以外にも初めての貴族の令嬢役マッダレーナ。ハンブルクバレエ団の大石裕香さんによる振付が、優しく自然でかつ官能的で話題となりました。キレのあるダンス以外でも見事なダンサーぶりを発揮しました。溜息が出るほど美しかったです。

同時上演のショー『Mr. Swing!』は、これまでと違い蘭寿さんと二人で踊る場面は減って、明日海りおさんに絡む怪しい踊りや、パンツスーツでの軽やかな群舞(写真右側)が印象的。会話を楽しむかのような蘭寿さんとのデュエットダンスも息の合ったダンサーコンビぶりを発揮しました。

年末には蘭寿とむディナーショー『T-ROAD』に出演。これはチケットが入手できずに残念。DVDでの鑑賞となりましたが、剣幸さんの退団公演『川霧の橋』の名場面を再現。この作品は蘭寿とむ・蘭乃はなコンビで観たかった!

蘭乃さんは、6月の『ベルサイユのばら―フェルゼンとマリー・アントワネット編―』、11月の『エリザベート』という、得意のダンスを封印してどちらかと言えば苦手な歌で勝負しなければいけないミュージカル大作で退団されます。ちなみに、この宝塚史上に残る作品二つで、ヒロインでありタイトルロールであるマリ-・アントワネットとエリザベート(シシー)を務めたことがあるのは、伝説の娘役花總まりさんと、可愛らしさでは史上最高と勝手に思っている白羽ゆりさんのお二人のみ。伝説に挑戦です。

ファンとしては、『エリザベート』の「私だけに」は歌は他の方に任せて、その心象表現を得意のダンスで見せる演出にならないか?と勝手に思っています。

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