ジョージクレバリー(GEORGE CLEVERLEY)のビスポーク
今回は古いビスポークシューズ(注文靴)のお話。
チゼルトウ(ノミの刃先のような形状のつま先)で有名な、ロンドンのビスポーク靴専門店ジョージクレバリー(GEORGE CLEVERLEY)製のサイドレースシューズです。
この靴が置いてあったのは、名古屋市栄のアルティジャーノ(Artigiano)というメンズリサイクルブティックで、靴以外にも高級衣料品のリサイクル商品が豊富にストックされていました。
全体の仕上げは、前回紹介した、既成靴の上級ラインであるアンソニークレバリーのほうが均一な仕上がりで、精巧に作られた工業製品。
一方、ビスポークの方は良い意味で手仕事のラフさが感じられ家内制手工業で作られた作品といったところでしょうか。
トウシェイプは、サイドウォールが垂直に立っていますが単純なチゼルトウではなく、僅かに中央部に柔らかな膨らみがありとても色気があります。
「THE RAKE」誌の2015年11月号によれば、ジョージクレバリーでは、アンソニークレバーリーの「チゼルトウ」と「サスピシャス・スクエアトウ」「レギュラーなスクエアトウ」の三種類のスクエアトウがあるのだとか。
使われている革はとてもしなやかで柔らかく、革質の良さも相まって、足を入れてみるとグッドイヤー・ウェルト製法の靴では味わったことのない返りの良さに驚かされます。
ソールはベベルドウェストで土踏まずが絞られていていて、一見するとさほど攻めた絞りではありませんが、よく見ると土踏まずの部分が斜めにカットされていて、これまで見たことのない形状です。また僅かに柔らかな膨らみを持たせてありますがフィドルバックというにはほんの控えめ。
踵の形状は横から見ると直線的でヒールはベンチメイドほどは小さくなくコバの張り出しもそこそこあるため、イタリアやフランスのモードなデザインとは対照的な英国靴らしさも備えています。
シンプルなデザインですが、クレバリーの美しいチゼルトウを堪能するには、以前紹介したプレーントウのサイドモンクやこの靴のようなプレーントウが一番かもしれません。
いつかは、ジョージクレバリーか富山市出身の福田洋平さんの工房で、クラッシックなチゼルトウの靴をビスポークしてみたいものですが...
この靴を注文した紳士はどのような方で、どのような思いで注文をし、どのような理由でこの靴を手放されたのか、そして、どのような経路をたどってこのお店にたどり着いたのか...
今回は、一足の古い靴をめぐるお話しでした。
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