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地方発ミュージカル路線の集大成、『ショウ・ボート』

ショウ・ボートのパネル
ショウ・ボートのパネル

3月12日に初日を迎えたオーバード・ホールの名作ミュージカル上演シリーズ第5弾で、日本初上演となる、エドナ・ファーバーの小説「Show Boat」を原作に、オスカー・ハマースタイン2世がミュージカル化した『ショウ・ボート』(演出・振付:ロジャー・カステヤーノ)が15日に熱狂のうちに千秋楽を迎えました。

ミシシッピ川を航行する劇場船(Show Boat)「コットン・ブロッサム号」の娘マグノリア(土居裕子)とならず者のゲイロード(岡幸二郎)のカップルを中心に、同船の看板女優ジュリー(剣幸)夫婦、同じくフランク(本間憲一)とエリー(北村岳子)、さらにはマグノリアの両親アンディ船長(浜畑賢吉)夫婦という4組の男女が織りなす悲劇と喜劇が、人種差別というベースの上に重層的に重なり紡ぎだす物語に、マグノリアと両親、マグノリア夫婦と娘のキム(麻尋えりか)といった親子間の愛の物語が加わり、物語に厚みを加えていました。

それでいて、切り捨てる点は潔く切り捨てることで初めて観る者にも容易に物語に入り込める演出。重いテーマは、コットン・ブロッサム号で働く黒人労働者ジョー(長谷川大祐)の歌にまかせることで、場面と場面のつなぎがすっきりして、深くとらえることもできれば、あっさりと場面転換の歌としてとらえることもできました。

そして、これまで以上にホールの舞台機構を活かした素晴らしい舞台美術と照明、音響。

何より、メインキャストだけではなくアマチュアの富山チーム皆さんも含めて、この大作を堂々と演じきった出演者の皆さんに惜しみない賞賛を贈ります。

印象的な場面をあげるときりがないのですが、マグノリアがショーで自信なく歌い出してお客達からブーイングを浴びせられ、そこに偶然居合わせることになった父アンディ船長がステージに駆け寄り「スマイル、スマイルだマグノリア」と励ますシーンはジンと来ました(『ファントム』というミュージカルで主人公クリスティーヌがオペラ座の怪人ファントムに励まされて歌い上げるシーンを思い出しました)。

それにしても、浜畑さんのお芝居は本当に素晴らしい!

また今回は剣さんに加え、富山市出身の麻尋えりか(宝塚歌劇団時代は麻尋しゅん)さんがこのシリーズに参加。

後にブロードウェイのスターになるマグノリアの娘役キム役で最後の場面を盛り上げます。ステージセンターでのびやかに踊る姿はひときわ光り輝き、さすがは元宝塚スターと思わせてくれました。

カーテンコールでは剣さんが声を詰まらせながら、このミュージカルの火を消してはいけないというメッセージを残してくださいました。また、出演者の話によれば客席からは同様のメッセージが書かれた横断幕もあったとか。

この作品を最後に退任される奈木隆芸術監督を中心に築き上げてきた、地方発信のミュージカル路線が一旦幕を閉じます。

秋には剣さん主演で『ミー・アンド・マイガール』の再演もありますが、ワークショップの継続や、大作・名作にこだわらずともこのミュージカル資産を次に活かしながら継承発展させて欲しいと願うばかりです。

それにしても、出演者のみなさん、スタッフの皆さん本当にありがとう!

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