活動レポート

韓国訪問

はじめに

第11回富山県日韓友好議員連盟訪韓団の団員として8月21日から3日間韓国を訪問しました。個人的には4回目となる訪韓であった。最初の訪韓は盧泰愚大統領(当時)訪日をきっかけとした国内情勢の極めて不安定な時期であったため、ソウル市役所前の広場を戦車がかためるという物々しい雰囲気であったことが忘れられなかった。しかし、訪韓を重ねるごとに、民主化が根をおろしまちの雰囲気も日本とさほど変わらなくなっていた。

極めて政治的関心度が高いと思っていたこの国も、日本と同じように若者を中心とした政治的無関心がひろがりつつある。6月に実施された全国統一選挙はワールドカップ開催中の選挙ではあったにせよ、平日の投票日を休日としたにもかかわらず、投票率は50パーセントを切るという惨憺たるものであったと、自治体国際化協会ソウル事務所石川義憲所長から伺ったときはさすがに驚いた。

地方分権と地方改革

(財)自治体国際化協会ソウル事務所では、石川義憲所長から「最近の韓国情勢」と題して、1.一般概況、2.政治体制・内政、3.経済、4.トピック、5.日韓交流の5項目についてご講義をいただいた。

このなかのトピックでは、先に触れた全国統一選挙。韓国でも検討されている5日制の導入問題のほか、わが国よりも先行して導入された電子政府・電子自治体、そして、地方分権と邑・面・洞(ゆう・めん・どう)と呼ばれる地方コミュニティーの改革について詳しくお話を伺えたので簡単に報告する。

電子政府・電子自治体についてはわが国でも8月から住基ネットが稼動をはじめたが、韓国ではADSLに代表されるブロードバンドの全国的普及もあり、中央政府はもとよりソウル市を中心として、民願処理(住民からの各種申請)、電子決済やインターネットによる地方税納付などが始まっている。

韓国は歴史的に強力な中央集権国家であり、かつてのわが国のような封建制度もなかった。いわゆる李朝時代にあっては地方の豪族が権力を握らないような巧みな政治システムで中央集権国家を維持していたし、独立後も民主化が達成されるまでは軍事力を背景にした中央集権国家であった。そのような中、2003年にようやく「地方分権一括法」の制定を目指している。

韓国の地方行政制度は、ソウル特別市ならびに、釜山、大邱、仁川、光州、大田、蔚山の6広域市、9道からなるわが国の都道府県にあたる広域自治体と、わが国の市町村にあたる基礎自治体と呼ばれる自治区(特別市、広域市に69団体)、市(道内に74団体)、郡(広域市に5団体、道内に84団体)の2階層ある。

さらに基礎自治体の下に邑・面・洞と呼ばれる下部行政単位があり、現在この邑・面・洞の機能改革がすすめられている。

邑は農村、面は町、洞は都市部にある町で、これらを「住民自治センター」を中心としたコミュニティーとして再編成しようというものであるが、住民サービスの低下を懸念する声や、かつては議会もあった(1961年に廃止)ことなどもあり、難航しているようである。

わが国における市町村合併のような自治体の再編が形態は違えども、隣国で行われているのは興味深い話である。

非武装地帯

DMZへ入るためのパス
DMZへ入るためのパス

最終日にはDMZ(非武装地帯/Demilitarized Zone)を訪問したが、あらためてこの国はいまだ戦争状態にあることを思い知らされた。

DMZとは軍事境界線をはさんで南北にそれぞれ2キロメートルづつ設定された、軍事衝突の緩衝地帯であり、基本的には民間人の立ち入りのできない軍事作戦区域である。

昨年、わが国でも「JSA」という映画が公開され大ヒットしたこともあり、ご存知の方も多いのではないだろうか。板門店はJSA(共同警備区域/Joint Security Area)のもともとの地域名であり、現在の公式名称はJSAである。

DMZへ向かう高速道路(「自由路」というやがて南北を結ぶ道路)には、くまなく鉄条網が張り巡らされ、あちこちに軍隊の監視小屋がおかれていた。DMZへ近づくと、道路上にシケインのようなバリケードが置かれ、専用バス内ではDMZ立ち入りの許可証が渡されパスポートチェックが行われた。軍のゲートをくぐった後は限られた撮影許可場所以外はカメラを向けることができない。

我々が最初に向かったのは「第3トンネル」と呼ばれる、北側が極秘に軍事境界線を越えて掘り進んだ軍事作戦用トンネルである。このようなトンネルが全部で4箇所発見されており、その中の3番目のトンネルであることから「第3トンネル」だそうだ。

専用トロッコで地下まで降りて徒歩で狭いトンネル内を歩き、軍事境界線まで200メートルを切ったところまでの立ち入りが許された。案内してくれた二十歳という兵士のあどけない顔が印象的である。

都羅山展望台にて韓国軍兵士と
都羅山展望台にて韓国軍兵士と

続いて都羅山(とらさん)展望台からDMZ全景と、霧のためかすんだ板門店の建物をながめた後、都羅山駅へ向かった。

都羅山駅は統一のシンボルともいえる南北を貫く線路のターミナル駅で、国民の寄付により韓国側の整備はほぼおわり、あとは北朝鮮側の工事を待つばかりとなっている。駅前の寄付をされた人々の名前を刻んだ記念碑と「ピョンヤン行」と書かれたプラットホームの行き先表示板に、統一への悲願が感じられた。

この他にもDMZ内の統一村(各種の租税免除のもと特別に居住を認められた一種の農業経済特区)や、ソウル市内の戦争記念館、故宮遺物博物館などを見学してきたが、DMZでの体験が一番印象に残った。

兵士が立つ都羅山駅改札
兵士が立つ都羅山駅改札

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