議会レポート

平成14年9月議会・一般質問

1. 都市計画とまちづくり

(1)都市の定義、まちの定義について

 平成14年9月定例会に当たり一般質問を行います。

 まず、都市計画とまちづくりについて質問いたします。

 都市計画やまちづくりを語る上で重要なのは、まず、「都市」「まち」に対する定義を明確にし、その定義を行政と市民が共有した上で、「だれのための」「何のための」都市計画やまちづくりであるかという基本に立ち返ることだと考えています。

 地方分権や市町村合併、新幹線開通に伴う富山駅周辺南北一体的まちづくり、中心市街地活性化と再開発事業といった重要課題、あるいは都市計画法と関連法案のたび重なる改正。一方で市民のまちづくりに対する関心の高まりなど都市計画やまちづくりに関する環境が大きく変わってきております。

 そこで、市長には、「都市」「まち」の定義についてどのようにお考えになるか、御所見をお伺いいたします。

(2)望月助役就任の意義

 さて、7月より望月助役が就任されました。都市開発、建設行政の専門家である新助役就任は、単に助役が2人になったということではない大きな意義があると考えます。具体的に、行政の中でどういった役割を担っていかれるかについてお答えください。

(3)スペシャリストの養成

 また、都市開発、建設行政にとどまらず、地方分権の推進と市民の行政に対するニーズの高まりと多様化を受けて、市職員の皆さんのさらなるスキル向上と市役所全体が高度な行政システムを構築することが必要と考えます。

 そのためには、極めて高い専門性を有するスペシャリスト職員の養成と幹部職員へのスペシャリストの登用が必要と思われますが、いかがでしょうか、お答えください。

(4)望月助役の21世紀の地方都市、中核市のまちづくりに対する所見

 さて、地方都市は中心市街地の空洞化や郊外の開発によるドーナツ化現象が起こり、都市機能が疲弊しております。一方、将来的には都心回帰が起こるとの予測もあります。

 そこで、望月助役には、国土交通省や地方自治体において都市開発、建設行政に携わってこられた経験から、ここでは富山ということではなく、今後、21世紀の地方都市・中核都市が取り組まなければいけないまちづくりについて、課題も含めて御所見を伺います。

(5)市町村合併と都市計画について

 次に、市町村合併と都市計画について伺います。

 市町村合併はスケールメリットを享受する規模の議論に行きがちですが、大切なのは将来を見据えてどのようなまちをつくっていくかということです。

 世界的な山岳地域を含む国際観光都市を目指すのか、あるいは環日本海に誇る一大湾岸都市を目指すのか。いずれにせよ、3月定例会での私の「新たな都市マスタープランの策定」という質問に対して、市長が「今後、行政改革その他市町村合併が進むこと、県の都市計画区域マスタープランとの整合などを図っていく必要がある。また、その後に起こり得る大きな社会状況等々の変化によっては、それに対応した見直しも生じてくるのではないかと思っている」と答弁されたとおり、新しいまちづくりを考えていかなければならない時期に来ております。

 近隣市町村は、それぞれ異なる都市計画の政策を持っています。また、都市計画法上も線引き制度の有無、都市計画区域の有無など異なる点があります。また、都市計画法の改正により、県がいわゆる線引きをするか否かの判断ができるようになりましたし、準都市計画区域や特定用途制限区域の創設も注目されているところでございます。

 合併については、具体的な組み合わせについてまだ何も決まった段階ではありませんし、建設計画についても合併協議会において協議されるわけですが、都市計画政策については制度を構築してもその姿が形となってあらわれるには長い年月を要するものであります。また、一度固定化してしまうと容易に都市の姿はつくり変えることができません。そういった意味で、市町村合併を踏まえた都市計画のあり方を早急に研究する必要があると思われますが、いかがでしょうか。御所見をお聞かせください。

2. 市街化調整区域における建築について

 次に、市街化調整区域における建築について伺います。

 「広報とやま」1237号のタウンミーティングに関するある記事が目にとまりました。「市街化調整区域に住宅を建設することができないか」という問いに対して、「市街化調整区域における住宅建設について、条件の見直しを検討している」という回答の内容でありました。恐らく、都市計画法第34条第8号の3に定めた、いわゆる「おおむね50以上の建築物が連たんしている地域での開発行為」を指すものと思われますが、紙面の都合上やむを得ないとは思いますが、誤解を招きかねない表現でもありますので、改めてその内容についてお答えください。

3.まちづくり条例について

 次に、まちづくり条例について伺います。3月定例会の中で、「まちづくりや都市景観形成に関する条例制定を目指す」との市長提案理由説明、同じく金井都市整備部長から「今後、まちづくり条例などについての検討も必要と考えている」「内容については、まず、景観やまちづくりに関する事項から検討を始めたい」「条例制定に当たっては、市民参画の体制づくりや市民の合意形成・協力が不可欠であり、市民の皆様と行政との協働が最も重要と考えている」との答弁がありました。

 御存じのとおり、一口に「まちづくり条例」といっても、さまざまな目的、手法、性格のものがあります。大型商業施設の開発に伴う地域環境への影響を緩和する目的のもの、景観や自然環境保全を目的とするもの、中心商店街を郊外の大型店進出から保護する目的のものなど。また、手法としてはゾーニング手法によるもの、手続によるもの、性格としては行政主導型のまちづくり、市民参画型のまちづくりなどがあります。

 金沢市では、景観に関する条例、土地利用に関する条例のほか、市民がみずからまちのあり方を考え、具体化してゆく手法として「金沢市における市民参画によるまちづくりの推進に関する条例」を制定し、他の関連する条例とあわせて、まちづくりに対する住民参加への道を開いております。地方自治のキーワードの1つ「自立自助」「市民協働」は、具体的なシステムの構築なしには単なるスローガンになってしまいます。

 「市民参画型まちづくり」についての検討をお願いするとともに、改めてどのような条例を目指すのか。また、その進捗状況についてお答えください。

4. 中心市街地活性化について

(1)「大手モールの賑わい事業」について

 次に、中心市街地活性化について伺います。

 大手モール一帯の街並みは、県内外の専門家からの評価も高い一方、十分にその価値が利用されていないとの指摘もあります。

 いよいよその対策の一環として、平成14年10月6日(日曜日)から、毎月第1・第4日曜日に「越中大手市場」が開催されることとなり、事業主体の株式会社まちづくりとやまに対する補助として400万円の補正予算が提案されました。出店規模も50を数え、今後、これを核にした大手モールの活性化が期待されるところです。同時に、市民が一体となってこの事業が定着されることこそ真の活性化につながるものと思います。一方では、全国的に有名になった護国神社で開催される「のみの市」との関係も気になるところです。

 さて、富山市全体のイベント、観光並びに商業スポットとの連携と、行政の手を離れ市民がみずから取り組む事業として離陸することが今後の成功のかぎであると思います。TMO並びに市としては、この事業にどのようにかかわっていくのか、今後の取り組みについてお答えください。

(2)中央通りパティオ事業について

 さて、中央通りにおいてパティオ事業が計画されています。中教院モルティの完成との相乗効果による賑わい創出の起爆剤として期待されるところであります。この事業についてTMOと市がどのようにかかわっているのか。また、具体的な事業計画並びに進捗状況についてお答えください。

(3)中教院モルティハイツについて

 いよいよオープンした中教院モルティハイツへの入居状況が50世帯96名に上り、都心居住への市民の期待の高さを示す一方、テナントの入居状況が芳しくないと伺っています。現在の状況と問題点並びに今後の対策についてお答えください。

 あわせて、この事業が完了した今、今後の再開発事業に生かしていくための貴重な知恵、教訓、例えばコンサルティングのあり方、設計のあり方、テナントミックスのあり方などが得られたのではないかと思いますが、モルティにとどまらない今後の再開発事業のあり方についてお答えください。

(4)CiCの再生について

 現在、薬の池田屋さんには年間約8万人もの方が訪れると聞いております。夏休み中も何台もの大型バスがお店の前に連なっておりました。この来訪者をCiCの「いきいきKAN」へ誘導し、富山のよさを体験していただけないものでしょうか。

 富山における観光客のほとんどが団体客であることから、大型観光バス駐車場の設置は当然、必須であります。また、「いきいきKAN」へ来場された方に満足していただけるよう、説明員の配置、オープンスペースでのイベント企画、例えば「おわら」「むぎや」の実演や踊りの指導、ガラス細工や土人形制作の体験コーナーなどの充実、立山連峰の様子を写した3D映像の上映、立山曼荼羅の展示などを他のイベントと連携して行うことはできないものでしょうか。

 さらに、駅から降りた一般観光客、ビジネスマンの方々が興味を引かれるようなCiCや「いきいきKAN」の宣伝看板、駅からCiCへの誘導・案内サインの配置。また、将来的には、駅から直接歩いていける空中回廊の設置なども検討できないでしょうか。

 全くの余談になりますが、先日、建設常任委員会の視察で郡山駅に降り立ったところ、有名な東北のお祭りの観光案内の巨大な看板に並んで、「おわら」の看板も掲げられていました。最初はなかなかのPRだと思いましたが、よく見るとどこにも「富山」や「越中」、あるいは「八尾」の文字がなく、富山の人間でなければ「おわら」が富山の祭りだとは思わず、東北のお祭りだと勘違いしたことでしょう。PRの大切さを別の意味で痛感いたしました。

 本題に戻ります。

 さて、本質的にはCiCは民間の手により再生を図るべきものですが、他のフロアを富山市が取得し、市民や団体が自由に使える生涯学習センターや高齢者サロンの設置、場合によっては市立図書館の別館として映像ライブラリー館の設置なども考えられるのではないでしょうか。

 以上の提案に対する御所見をお聞かせください。

(5)TMOと中心市街地活性化推進室の役割について

 これまでに述べた中心市街地活性化におけるTMOと中心市街地活性化推進室の役割は、非常に重要であったと同時に、今後、役割の重さがさらに増すであろうことが予想されるがゆえに、いま一度、組織のあり方、役割分担の明確化、所期の目的について考え直さなければいけない時期に来ていると考えます。

 TMOについては、企業から優秀な人材が手弁当で参加されていると聞いております。そういった自分たちの手で富山を生き生きさせていこうという熱意がこれからの事業の中に具体的な形となってあらわれてくると信じております。

 一方、中心市街地活性化や再開発事業に対し、もっと話し合える場が欲しいとの地元を初めとする市民の声を聞きます。既にワークショップの開催などさまざまな事業に取り組んでこられているとは思いますが、TMOによる仕掛けづくりをさらに行い、市民協働によるまちづくりを一層進めていただきたいと思います。そのような点も踏まえ、TMOと行政の役割、現在の具体的な活動内容についてお尋ねします。

 また、中心市街地活性化推進室が仕掛けを担当するのか、はたまた実行部隊としての役割を背負っているのか。その責任の所在はどこにあるのか。また、モルティのような住居、商業施設が混在するプロジェクトへの取り組みなどを見ても、住宅政策や都市整備政策とは密接にそして複雑に絡み合い、あるいは今後、福祉施設がこれらの中心市街地活性化におけるプロジェクトの核になり得る可能性があることなど、さらには郊外における商業施設の開発などが中心市街地活性化に与える影響の大きさなどを考えると、以前の質問でも取り上げましたが、中心市街地活性化推進室を商工労働部の1セクションとしてではなく、責任と目的と権限を明確にした組織に再構築する必要があると思われますが、御所見をお聞かせください。


5. 子供達と芸術のふれあい体験事業について

 次に、本年度から実施されました「子供たちと芸術との出会い体験事業」について伺います。

 私の地元、光陽校区でも、1人の方が──この方はPTAの方でしたが──フォルクローレを演奏するグループを子供たちに聞かせてやりたいとこの事業に応募され、地域の皆さんの協力のもと、6月30日に光陽小学校体育館でコンサートを開催されました。来場された方のアンケートでも、「感動して涙がとまらなかった」などの御意見をいただき、当日、音響スタッフとして参加した私も感動いたしました。

 子供たちに感動を伝えると同時に、市民に地域での活躍の場を提供することができた事業だと考えます。これまでの地域組織の枠組みにとらわれず、市民が地域づくりに参画できる事業は、市民提案型まちづくり事業と同様、これから地道に続けていく必要があると思います。今回の事業の成果と今後の取り組みについてお答えください。


6. 学校環境衛生−測定と対策について

最後に、学校環境衛生基準における測定と対策について伺います。

 今、国民の間で「安全」に対する関心が高まりつつあります。

 さて、学校環境衛生の基準改正に基づき、学校保健課により光陽小学校を含む2校で化学物質の測定が行われるとお聞きしました。その測定方法についてお答えください。

 また、国土交通省においても、平成14年7月12日の建築基準法の改正により、シックハウス症候群の対策に乗り出したところですが、教育施設のみならず、ここ数年の間に建築、改修された市がかかわる文化施設全般についても検査をされてはいかがでしょうか。さらに踏み込んで、汚染物質の除去に関する調査・研究も必要かと思われます。

 光触媒やバイオテクノロジーを用いた製品も市場に出回り始めております。効果のない、法改正に便乗した商品も多いとの関係者の指摘もあります。県や庁内関係部局と連携しての調査・研究の可能性について御所見を伺いまして、質問を終わります。

答弁

森雅志 市長答弁

 鋪田議員の御質問にお答えします。

 私のほうからは、都市計画とまちづ くりのうち2点についてお答えを申し上げ、その他につきましては、助役並びに担当部長からお答えいたしますので、御理解をお願いいたします。

 一番最初にございました「都市」の定義、「まち」の定義についてどのように考えているのかとのお尋ねにお答えします。

「都市」とは、歴史的に権力の中心としての「都」と、人と人のコミュニケーションの場としての「市」が合成し、こうした2つが重なり発展した「都」が「都市」と呼ばれるようになったものと思います。

 今日では、「都市」は、人間が安住している地域社会の単位の一つと考えられ、人口の集中した地域で、社会的、経済的、政治的活動の中心となる場所と考えております。

 一方、「まち」とは、都市内での人々の活動に焦点を当てた地域社会の概念と考えております。

 最近は、平仮名の「まち」がよく使われていますが、これは都市計画に代表されるまちづくりが漢字の「都市」でイメージされるハードなものづくりだけではなく、地域の運営や自治のあり方、市民の共同意識や活動などをよりよいものにしていくという仕組みづくりなどさまざまのソフト面を含むものであり、ハードもソフトもかみ合ったトータルな考え方としてとらえております。

 このため、富山市総合計画新世紀プランにおきましても「人間性の尊重」という基本理念に基づいて、心や暮らしの豊かさを求めることができ、お互いが協力して活力ある地域社会を築いていけるよう、「住む」「育てる」「働く」「学ぶ」「楽しむ」「創る」「支え合う」といった7つの視点でまちづくりをとらえ、取り組んでいくこととしているところでございます。

 2番目に御質問のありました望月助役就任の意義について、どういう役割を期待しているのかとのお尋ねにお答えいたします。

 現在、本市では、中心市街地活性化対策、新幹線富山駅整備、富山駅周辺地区南北一体化の問題、富山大橋の架けかえなどの重要課題を抱えております。このことは、平成25年に予定される新幹線の開通までにしっかりとした魅力あるまちづくりを進めることで、持続的に発展する都市として飛躍させていこうとすることにほかなりません。加えて、市町村合併の問題も12月議会までに富山市としての方向づけが必要であるなど、市政のかじ取りは極めて重要な局面にあります。

 このような中で、技術系分野における高度な専門知識と豊かな行政経験をお持ちの望月助役をお迎えし、「まちづくり」などの重要課題への手腕に期待するのみならず、将来を見据えた技術系職員の育成にも期待しているところであります。

 望月助役を加えた体制により、行政能力の強化をなし、山積した重要課題に果敢に取り組み、中核市として自立した行政運営の実現を図ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。

石田淳 助役答弁

 中心市街地活性化についての中で、TMOと行政の役割、現在の具体的な活動内容についてお聞きしたいということでございます。

 株式会社まちづくりとやまは、「富山市中心市街地活性化基本計画」に基づきまして、商業集積を一体的かつ計画的に管理・運営を行う機関として位置づけております。

 株式会社まちづくりとやまが事業を実施するに当たりましては、自発的にやる気のある商業者、地域住民などで構成する事業実行委員会を組織し、事業化に向けて詳細な事業計画を作成し、中心市街地全体のまちづくりを各商店街との連携・調整を図りながら推進していくこととしております。

 現在、事業実行委員会として、1つには、ミニ・チャレンジショップ「フリーク・ポケット」「まちなか西遊房」の運営管理を行うインキュベータ・ショップ運営事業実行委員会、それから、もう1つは、コミュニティバスを運行するコミュニティバス運行事業実行委員会、もう1つは、大手モールにおいて地元と市民との協働による賑わいづくりを行う「越中大手市場」事業実行委員会など10の事業実行委員会を設置し、中心市街地の活性化の推進に取り組んでおります。

 また、事業実行委員会とともに重要な柱に位置づけている組織として、1つには、市民から広く中心市街地のまちづくりに対する企画・提案を受ける場、また、もう1つには、商店街、商業者に対する要望を聞く意見交換の場として「まちづくり公房」を設置し、ここで出された市民などの企画・提案等についてまちづくりに反映させていくこととしております。

 市といたしましては、事業実行委員会や「まちづくり公房」と十分に連携をとりながら、商業者、市民、行政が官民一体とな り、中心市街地の活性化の推進に努めてまいりたいと考えております。

 もう1つは、同じく中心市街地活性化についてということで、中心市街地活性化推進室が商工労働部の1セクションとしてではなく、責任と目的と権限を明確にした組織に再構築する必要があるのではないかという御質問でございます。

 中心市街地の活性化を図るためには、御指摘のように商業等の活性化だけではなく、住宅政策、都市整備政策、福祉政策や交通体系など広範な施策を一体的、総合的に推進することが重要でございます。

 このことから、本市では、平成10年4月に私が本部長となり、関係部局による横断的連絡調整組織として「都心地区まちづくり推進本部」を設置してきたところであり、さらに本年7月には、新たに望月助役に副本部長をお願いいたしたところであります。

 この横断的調整組織の事務局として、平成11年4月に商工労働部内に「中心市街地活性化推進室」を設置し、活性化に向けた施策について協議を重ねているところであり、今後とも庁内関係部局とも連携を密にしながら、より一層中心市街地の活性化の推進に取り組んでまいりたいと考えております。

望月明彦 助役答弁

 私のほうからは、都市計画とまちづくりのうち、21世紀の地方都市・中核都市のまちづくりに対する所見ということでお答えをしたいと思います。

 21世紀を迎え、本格的な少子・高齢化社会の到来や高度情報化の進展、環境問題の重大化など市民、企業、そして行政を取り巻く環境は大きな転換期を迎えております。

 我が国の地方都市、とりわけ地方の中核都市と言われる都市におきましては、これまで人口の増加や車社会の進展に対応して、例えば、増大する交通需要に対応した道路整備でありますとか、計画的な住宅市街地の整備を中心にしてまちづくりを展開してきたわけでございます。その結果として、住宅や商業施設の郊外移転による低密度な市街地の拡大、あるいは中心市街地などの既成市街地の空洞化などの減少が進展してきました。

 さらに、これからは、急速に進む高齢化による交通弱者の増大や医療・介護・福祉といった分野における経費の増大。さらには、成熟した社会の中での投資的な経費予算の減少。高速交通網の整備や地方分権の進展に伴う広域的な都市間競争の時代の到来などといった課題に直面してくるものと考えております。

 これらの課題に対応していくためには、中心市街地や地域拠点に人口や生活の諸機能を集中させる「コンパクトなまちづくり」を進め、魅力ある市街地をつくり上げていくことが重要であると考えております。

 このことによりまして、1つとして、高齢者等の交通弱者が安心して快適に生活できる都市環境づくり、2つめとして、地域の個性、魅力が発信でき、広域から人を集められ、賑わいを創出するまちづくり、3点目として、介護・福祉事業などの効率化、公共投資の効率化、既存ストックの有効活用などの行政の効率化、4点目として、二酸化炭素排出量削減などの地球環境問題への対応などの効果が期待できるものと考えております。

 富山市においてもこれらのことは例外ではなく、他都市に比べて市街地が低密度に、広範囲に拡大していることなどから、「コンパクトなまちづくり」の重要性は極めて高く、今後のまちづくりの基本的方向とすべきものと考えております。

杉原信介 企画管理部長答弁

 都市計画とまちづくりのうち、スペシャリスト職員の養成と幹部職員へのスペシャリストの登用が必要と思うがいかがかとの御質問にお答えをいたします。

 複雑・多様化する市民ニーズや地方分権の進展に的確に対応していくためには、職員一人一人の資質や能力の向上を図り 、専門性を備えた政策形成能力等を積極的に活用していく必要があります。さらには、情報処理、福祉、環境、芸術文化、都市整備などそれぞれの特定の行政分野に精通したスペシャリストを計画的に育成していくこともますます重要になると考えております。

 このため本市では、毎年、市町村職員中央研修所や全国建設研修センターでの専門実務研修へ派遣するなど職員の専門能力の向上に努めてきたところであります。また部内育成では、時間を要する専門性の高い職種については、外部の有為な人材の確保も図ってきたところであります。なお、専門的な知識、経験を有する者を任期を限って採用できる制度の導入については、今後、研究してまいりたいと考えております。

 また、特定の行政分野に精通したスペシャリストの幹部職員への登用につきましては、スタッフ職を昇進管理の制度上、明確に位置づけて活用する人事管理について研究してまいりたいと考えております。

 次に、「子供たちと芸術との出会い体験事業」について、事業の成果と今後の取り組みについての御質問にお答えをいたします。

 「子供たちと芸術との出会い体験事業」は、子供たちに身近なところで芸術と出会う機会をより多く提供することによって、長期的な視点から文化のまちづくりを進めることを目的として本年度から実施しているものでございます。

 事業の内容といたしましては、1つには、子供たちに芸術を提供する128団体・個人のリストを作成し、公民館やふるさとづくり推進協議会、学校・保育所の保護者会など約700カ所に配布をいたしております。2つめには、地域のさまざまな団体や個人がリスト掲載者に依頼し、子供たちに芸術との出会いを提供する場合に、その事業費の一部を支援いたしております。

 今年度は、保育所や幼稚園・小学校の保護者会、町内会やふるさとづくり推進協議会などが中心となり、23カ所、約2,300人の子供たちに、ミュージカルや和太鼓、オーケストラ、アンデス民謡、人形劇、茶道などのさまざまな芸術との出会いを提供することといたしております。

 現在まで12カ所で実施されており、皆様方からは、「初めて演奏会を開催したが、子供たちは真剣に、時には楽しく聞いていた」とか、「芸術を通じて親子のふれあいも深まった」「日本の伝統文化に触れるよい機会となった」などの感想が寄せられており、御好評をいただいていると判断しているところであります。

 市といたしましては、今後ともより多くの子供たち が芸術に親しみ、将来の芸術愛好家が一人でも多く育っていくよう、またそのような環境を地域の方々が自主的に作り出していくことができるよう努めてまいりたいと考えております。

 以上であります。

金井利靖 都市整備部長答弁

 都市計画とまちづくりのうち、市町村合併を踏まえた都市計画のあり方を早急に研究する必要があるのではないかとのお尋ねにお答えします。

 都市計画とは、望ましい都市空間を実現するために土地利用規制や都市計画事業に基づいて行う総合的な計画であり、まちづくりを具体化するための手段であります。

 市町村合併の協議過程で新たな組み合わせが検討される際には、都市計画のあり方についても、当然、議論される必要があると考えております。

 市町村合併の具体的な組み合わせがまだ決まっていないことから、今後の合併協議会での議論と並行して、まちづくり、都市計画を研究していくべきものと考えております。

 現在、県では「富山県都市計画マスタープラン」が検討されており、それと整合して「市町村の都市計画に関する基本的な方針」についての見直しも検討してまいりたいと考えております。

 次に、市街化調整区域における建築について、「市街化調整区域における住宅建設について、条件の見直しを検討している」ことの内容についてのお尋ねでございます。

 条件の見直しを検討しているという内容につきましては、1点目は、集落の自然的な拡大などにより実情にそぐわなくなっている大規模指定既存集落について、範囲を見直すことを検討しているものであります。

 2点目は、都市計画法第34条第8号の2の規定により、地区計画が定められた地区については開発が認められることから、地区計画を都市計画決定する際の適用条件や整備計画として盛り込む内容につきましてガイドラインを検討しているものであります。

 なお、都市計画法第34条第8号の3の規定により、条例で開発を認める区域等を定めることにつきましては、平成15年度を目途に策定作業中の「富山県都市計画マスタープラン」との連携や整合性の確保に留意する必要があり、富山県などと協議を進めながら研究してまいりたいと考えております。

 次に、まちづくり条例について、「市民参画型まちづくり」についての検討をお願いするとともに、改めてどのような条例を目指すのか。また、その進捗状況についてのお尋ねであります。

 本市で目指しております景観まちづくり条例につきましては、「都市景観の創造と土地利用の適正化について」をテーマに検討を行っております。この中で、都市景観の創造につきましては、現在検討中の富山県景観条例を見据えながら、良好な景観の形成について検討してまいりたいと考えております。また、土地利用の適正化につきましては、マンション問題等の中心市街地周辺部で起きている問題に対応するとともに、中心市街地ではより高層の建築物に対する評価もあわせて検討してまいりたいと考えております。

 こうした地域の問題にかかることにつきましては、私権の制限を伴うことになりますので、条例の制定に当たっての市民参画の体制づくりや市民の合意形成・協力が得られることが最も重要であり、これらのことについても盛り込んでいくことも検討してまいります。

これらの検討については、問題が多岐にわたることから、庁内関係課で組織する「(仮称)富山市景観まちづくり条例案」研究会を設置し、景観まちづくりに関する課題等について調査を進めております。

 次に、中教院モルティハイツについて、テナントの入居状況が芳しくないと聞いているが、現在の状況と問題点並びに今後の対策についてのお尋ねであります。

 中教院モルティは、商業施設、インキュベータ・オフィス、住宅施設の複合施設として建設されたものであります。1階の商業施設は、商店街の連続性を確保するための施設として計画されております。

 商業施設の入居状況は、東側の区画では衣料品販売店が1店舗開店しており、残り1店舗についても9月下旬のオープンを目指して、現在、内装工事中であります。西側の2区画では、再開発事業の事業主体である個人施行者と入居希望者4組の方々が入居条件等について協議されており、近日中に入居者が決定するものと聞いております。

 したがいまして、計画された商業施設につきましては、すべての床の入居者がそろうものと考えております。

 次に、コンサルティングのあり方、設計のあり方、テナントミックスのあり方など今後の再開発事業のあり方についてのお尋ねであります。

 再開発の施設構想は、権利者の意向把握を繰り返し、いくつもの案を構想し、また取捨選択しながら詰められていくものであります。

 施設建築物の全体の構想づくりに当たりましては、再開発専門コンサルタントを活用しながら積み上げられていくものでありますが、特に商業計画につきましては、商業コンサルタントのアドバイスを得ながら、商業環境やコンセプト、店舗配置やテナントミックスなどについて権利者の意向集約と調整を行いながら固めていかれるものであります。

 しかし、近年の厳しい商業環境の中では理想とする施設構想と現実とを十分踏まえ、1つには、立地環境にふさわしい施設規模やテナント構成、2つには、建物の床価格や賃料などの経済条件、3つには、ビル完成後の適切な管理運営などについて事業推進の各段階ごとに十分検討されるよう誘導してまいりたいと考えているところであります。

 以上でございます。

中川泰三 商工労働部長答弁

 中心市街地活性化について5点の質問がありました。最初に、大手モールの賑わい事業について、TMO並びに市としてこの事業にどのようにかかわっていくのか、また、今後の取り組みについてはどうかについてお答えいたします。

 大手モールは、平成元年3月に市民プラザ建設とあわせて整備され、その後、全日空ホテルや国際会議場も整備されたことから、街並 みにふさわしい賑わいの創出が求められてきたところであります。

 このことから、株式会社まちづくりとやまが市民参加により組織している「まちづくり公房」のイベント部会において、大手モールでの「朝市」などによる賑わいづくりが提案され、さらに市民のボランティア団体においても、自主的に街なかでの新鮮で安全な地場産品の供給を目指して「バザール」の検討がなされてきたところであります。

 そのため、株式会社まちづくりとやまでは、地元の大手モール振興会の皆さんと市民との協働による賑わいづくりを支援するため、本年7月に「越中大手市場」事業実行委員会を設置し、事業の実現に向けた計画づくりを進めてきたところであります。

 市といたしましては、この事業が大手モールのみならず、中心市街地全体への賑わいの波及効果が高いと考え、テントやテーブルなどの購入やPR費用などについて支援してまいりたいと考えております。

 なお、当面は株式会社まちづくりとやまが事業主体となり、市とともに市民の方々の活動を支援していくこととしておりますが、将来的には出店料などでの自主的運営が可能となる仕組みづくりについて検討してまいりたいと考えております。

 また、出店者には販売指導を行い、新しいタイプの「チャレンジショップ」として新規創業者の発掘に期待しているところであります。

 市としましては、今後とも関係者の皆さんが一体となって大手モールの賑わいづくりに取り組んでいただくとともに、多くの市民が中心市街地を訪れ、「街なか」を楽しんでいただきたいと考えております。

 次に、中央通りパティオ事業について、TMOと市がどのようにかかわっているのか。また、具体的な事業計画並びに進捗状況について問うにお答えいたします。

 現在、中央通り商店街では、核店舗の役割を果たしてきた大型店等の退店が相次ぐなど空洞化が進み、商店街への来街者が減少している状況であります。

 このような中で、現在、株式会社まちづくりとやまが地元商店街とともに活性化の起爆剤としてパティオ事業の推進に努められてきております。

 この事業計画につきましては、中心市街地の活性化や賑わいづくりを進めるための事業であることからも、中心市街地活性化基本計画やTMO構想にも位置づけております。

 現在、株式会社まちづくりとやまでは、事業化の可能性について、1つには事業の収支計画、2つには事業の運営主体、3つには観光バス駐車場の設置などの課題について検討されているところであります。

 市といたしましては、今後とも株式会社まちづくりとやまと十分連携を図りながら、中心市街地の活性化の推進に努めてまいりたいと考えております。

 次に、CiCの再生についてのうち、「池田屋」の来訪者をCiCの「いきいきKAN」へ誘導し、富山のよさを体験していただけないか。また、観光客のほとんどが団体客であることから、バス駐車場の設置が必要ではないかについてお答えします。

 現在、いきいきKANでは、1つには富山の観光情報を紹介する観光情報センター、2つには県内の物産の展示・販売を行うゾーン、3つにはガラス工芸などの体験コーナーなどを設置し、市民や観光客の皆様に御利用いただいているところであります。また、富山市定期観光バスの利用者や観光客を誘導し、富山のよさを体験していただいております。

 御提案の池田屋への来訪者をいきいきKANへ誘導することにつきましては、今後、旅行エージェントなどに積極的に働きかけるとともに、観光客にとって富山の魅力を十分味わっていただけるよう業務内容の充実を図ってまいりたいと考えております。

 次に、バスの駐車場につきましては、現在、JR富山駅西側の2カ所に15台分を設置し、団体客などの利便を図っているところであり、今後とも県内外の観光業者などに広くPRを行い、利用の促進を図ってまいりたいと考えております。

 次に、いきいきKANへ来場された方に満足していただけるように、説明員の配置やオープンスペースでのイベント企画、ガラス細工や土人形制作の体験コーナーなどの充実はできないかについてお答えいたします。

 いきいきKANでは、利用者が減少していることから、その利用促進を図るため、1つには、「おわら」「むぎや」など民謡踊りの定期的な披露と踊りの体験、2つには、四季折々のすばらしい立山連峰の映像、3つには、300年の伝統を誇る富山の丸薬づくりの体験などができないか。リニューアルも含めその可能性について、県、市、財団法人富山観光物産センター、富山県いきいき物産株式会社、富山市観光協会など関係機関と研究しているところであります。

 御指摘の説明員の配置につきましては、現在、団体客などの予約があった場合、いきいきKANの職員が対応しておりますが、今後、常時説明できる体制づくりに努めてまいりたいと考えております。

 最後に、CiCへの宣伝看板、誘導・案内サインの配置や空中回廊の設置などを検討できないか。また、市がフロアを取得し、市民や団体が自由に使える施設の設置なども考えられないかについてお答えをいたします。

 CiCビルの再生には、第1に富山駅前開発株式会社の自助努力が不可欠であり、同社が今後作成する再生計画案が債権者の同意を得て裁判所から認可を受けることが極めて重要となっております。

 そのためには、テナントの確保や家賃、共益費などの見直しによる収入増やCiCビルの活性化に向けたコンセプトづくりが早期に図られるべきであると考えております。

 このことから、去る8月19日に富山駅前開発株式会社、富山商工会議所、株式会社北陸銀行、富山エクセルホテル東急、財団法人富山観光物産センター、県、市により、富山駅前地区活性化協議会が設立されたところであります。

 現在、同協議会においてCiCビルの課題を整理しながら、活性化に向けたコンセプトづくりやビルの外観、誘導・案内サインの表示、動線の見直しなど集客を増やすための仕掛けづくりについて協議、検討しているところであります。

 なお、御提案の空中回廊の設置についてでありますが、富山駅と周辺施設を結ぶ人と車の移動動線のあり方について、北陸新幹線富山駅整備にあわせ、南口広場の形態の見直しを行う際に研究してまいりたいと考えております。

 いずれにいたしましても、CiCビルは県都富山市の玄関口という一等地に立地し、駅周辺のシンボル的存在であることから、今後、富山駅前開発株式会社の自助努力のみでは再生が困難であると判断される場合は、この協議会においてまとめられるコンセプトやフロア構成案の内容を見ながら、市としてどのような支援ができるのか検討してまいりたいと考えております。

 以上であります。

大島哲夫 教育長答弁

 学校環境衛生、測定と対策について、光陽小学校を含む2校で実施した化学物質の測定方法と、もう1つは、市がかかわる文化施設全般についても検査してはどうかというお尋ねでございます。

 学校環境衛生の基準改定に基づくホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンの揮発性有機化合物の測定につきましては、学校薬剤師と協議し、本年4月に開校した光陽小学校と平成12年度に大規模改造が終了した桜谷小学校の建築年度の新しい2校の検査を行ったところであります。

 お尋ねの検査方法につきましては、改正された「学校環境衛生の基準」に基づいて、1校当たり普通教室、音楽室、図工室、コンピューター室、体育館の5カ所において、揮発性有機化合物4項目について、固相吸着法で30分間2回採取し、ホルムアルデヒドは高速液体クロマトグラフ法によって分析するものであり、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンについては、ガスクロマトグラフィー質量分析法を用いるものであります。検査につきましては9月7日と8日に検体を採取しており、結果につきましては10月上旬に報告を受ける予定であります。

 今後の検査につきましては、今年度の検査結果を踏まえて、必要と判断される場合には検査項目や検査場所等を富山市学校薬剤師会と協議し計画的に実施するとともに、他の文化施設全般につきましては、今年度の検査結果や建築年度、建物の状況などを総合的に勘案し、検討してまいりたいと考えております。

山口五十一 建設部長答弁

学校環境衛生のうち、シックハウス症候群の対策における汚染物質の除去と光触媒やバイオテクノロジーを用いた製品の使用に対する調査・研究についてお答えをいたします。

 国では、平成14年7月に建築基準法を改正され、居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置として、「建築材料及び換気設備について政令で定める技術基準に適合しなければならない」とされたところであります。しかし、その政令は法公布後、1年以内に施行するとされており、現在、その技術基準が明らかにされていない状況であります。

 このような状況の中で、生活環境の汚染への関心が高まっていることから、光触媒やバイオテクノロジーを利用した新しい製品が開発されているところであります。

 このことから、本市においては、政令が施行されるまでの間、汚染物質の発生がより少ない建築材料の使用に努めるとともに、居室内の汚染物質を低減するため、換気設備の設置を図ってまいりたいと考えております。

 なお、お尋ねの汚染物質の除去に関するものと光触媒やバイオテクノロジーなど新技術を使った製品に対する調査・研究については、あらゆる機会をとらえて情報の収集に努めてまいりたいと考えております。

 以上であります。

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