議会レポート

平成18年6月議会・一般質問

1. 都市居住について

 昨年から実施されている「富山市まちなか居住推進事業」について伺います。

 この事業は、平成26年までの10年間で約7千人、3千戸の住宅供給を目標としています。残念ながら平成17年度実績が思うように伸びず、平成18年度予算では減額となってしまいました。市民・事業者への周知が充分でないためにニーズの掘り起こしが出来なかったのか、あるいはニーズとかけ離れていて、都心居住の動機付けとして働かなかったのか。まだ実施から1年ではありますが、この事業の実績と評価について答弁を求めます。

 また、事業者向けの施策としてはかなり思い切った内容の制度でありますが、市民向けの施策として充分な内容だったのでしょうか。

 昨年6月議会でも指摘したように、防火地域での建築費の割り増し分、固定資産税の負担など、都心居住にはコストがかかります。もちろん助成があるから都心に住むというわけではありません。単に都心部に住みたいというニーズの方もいらっしゃるでしょうが、医療機関に近い、職場に近い、魅力的な学校や公園などがある、公共交通の便がよいなど、生活環境面の価値が重要であり、マンション購入者や新たに土地を求めたりする方にとっては、土地価格やマンション価格とそれら生活環境面の価値とを総合的に勘案して、郊外居住と比較することになるでしょう。そういった意味では、これから建設が始まる統合小学校も都心居住の価値を高めることになるかもしれません。

 しかしながら、住宅取得価格からみた50万円の助成も「ないよりはマシ」といった実際の利用者の声もあります。先に述べた10年間で3千戸の目標を達成するための仕掛けとしては充分ではないと考えます。あらためて助成額の見直しを検討されませんか。見解を求めます。

 さらに重要なのは、どういった方に住んでもらうかという中身の問題です。数だけではなく、都心の人々の暮らしぶりに想像力を働かせる必要があります。

 私の同級生などで都心部に実家があるのに、建て替えようと思っても多世帯同居する家を建てる充分な広さの敷地がない。中層化させて多世帯同居住宅を作れば建築コストがかさむ。などの理由で実家を離れ郊外で居住しているケースが多くあります。

 活気あるまちの条件として、常に世代交代があることがあげられます。多摩ニュータウンの例ではありませんが、ある時期ある地域に人が集まっても同じ年齢構成の方ばかりであれば、みなさんいっせいに歳をとって行きやがて高齢者だけのまちとなってしまいます。様々な世代の方が住めるまち。世代交代に耐えられるまちをつくることが重要です。

 このようなことを考えると、多世帯住宅の取得にはさらに上乗せ助成をすることや、建て替えの際に隣地に未利用地があった場合の土地取得などに対するする支援なども検討して行く必要があると考えます。また、飛躍しすぎるかもしれませんが少子化の原因のひとつに日本の住宅事情の悪さも指摘されています。市内全域で多世帯住宅支援というわけにも行きませんから、モデル的に、上乗せ助成といった財政支援や、建蔽率・容積率の緩和など、もちろん建蔽率に関しては災害に強いまちづくりなどの観点から、慎重に考慮しなければいけませんが、多世帯住宅支援を都心居住施策に取り入れるべきと考えますが、見解を求めます。

 また、都心居住が進むと、低層住宅と中高層住宅の混在はあらたな住民紛争の火種となる可能性があります。ミニ区画整理を活用するなど、棲み分けについても具体的な対策が必要と考えますが、見解を求めます。

 都心居住といえば、先ごろの都心部での火災のことを取り上げないわけには行きません。被災された市民に心からお見舞い申し上げます。

 この火災を教訓に、都市計画の面から、建築密集地における災害に強いまちづくりが求められます。今後の具体策について答弁を求めます。さらに消防の面からハードの整備、現場での部隊編成など出動態勢の再検討を求めるとともに、消防局はもとより消防団も含めた現場での消防力向上のため、図上訓練など含めた訓練の充実を図るべきと考えますがいかがでしょうか。消防局長の答弁を求めます。

2. 景観行政について

 景観行政について伺います。

 富山市内で高さ45メートルにも達する14階建て、15階建ての超高層マンションの建設計画ラッシュが起きています。私も2つの地域からご相談を受けて、「市役所出前講座」の形式で「地区計画」「建築協定」の勉強会を開催しました。しかしながら「地区計画」「建築協定」といった制度のハードルの高さに住民のなかからは諦めにも似た声が聞かれました。いずれも地域住民が自分たちで公共のルールを作り、それを地域みんなで守る覚悟がなければ成り立たないからです。だからこそ、その困難を乗り越えて真の自分たちのまちづくりのルールを作っていただきたいと願いますが、現実的には相当な困難を伴うのも事実です。そういった意味では、国土交通省が検討に入ったとされる「住民組合法人」という仕組みについては大変興味深いものがあります。この「住民組合法人」について、どのようにとらえればよいか、情報があればご披露ください。

 現在計画が進められているマンションの特徴としては、都心部をはずれた国道や県道といった幹線道路沿いに建設が予定されているものの、その背後には低層住宅が広がっていること。そして、先ほど述べたように高さ45メートルにも達する14階建て、15階建ての超高層マンションであることです。これまで建設されたマンションの多くは、都心部は別にして、7階建て8階建てというものが主流でしたが、ここへきて都心以外でもそれらを遥かに超える超高層マンションの建設計画が進行しています

 反対運動をされている方からは、「富山市がせっかく都心居住を推進しているのに、わざわざ低層住宅地や田んぼが広がるところに高層マンションを作らなくても」という恨みも聞こえてきます。また、「コンパクトなまちづくり」のために多大な投資をしている行政側の経済的合理性に反するという市民の意見ももっともだと頷かされます。一方で、都心部でのマンション建設にも反対運動が起きているのですから、これは簡単な問題ではありません。

 住民の皆さんの反対理由としては「ビル風」「電波障害」「日陰」「交通渋滞」「高層階からのプライバシー侵害」「融雪や工事に伴う地下水の枯渇」そして「立山仰ぐ特等席の景観の破壊」など様々です。

「日陰」「高層階からのプライバシー侵害」に関しては、隣地に建つのが2階建て住宅であっても、境界ぎりぎりに建てば問題となってきますし、むしろ日陰規制がない分深刻であるといえます。また、「立山仰ぐ特等席の景観の破壊」についても、東側に建物があれば、自宅から居ながらにして立山を仰ぐわけにはいかないので、一概に高層マンションだけがいけないと言い切るわけには行きません。ただし、高層建築となることでその影響が広範囲に渡ることは確かです。

 用途地域では建物の用途については規制がありますが、第1種低層住居専用地域を除けば、建物の高さや大きさについて、基本的には建蔽率と容積率によってのみ制限を受けます。先の質問で「富山市まちなか居住推進事業」について質問をいたしましたが、これにはゾーンの指定があり、用途地域にはない具体的な高さの指針が定められています。これは富山市が考える高さというものに対するひとつの見解であると理解しています。ただし、建築基準法や都市計画法で土地利用についてあるいは建築についての保証がされている以上、制限を加えることは相当の合意と覚悟が必要です。

 住民の皆さんが問題とするのは、先ほど挙げた個別の事柄よりも、低層な建物が広がっている地域の中に突如として45メートルにも達する建築物がそびえることに対する違和感です。威圧感や恐れといった類の感情ではないかと思います。このことは心や感覚の問題であり、高さが何メートまでならよいかという数字の問題ではないような気がします。そしてそれは、建築物の色彩や意匠といったものにも似た景観の問題だと考えます。「景観まちづくり条例」を制定した際に建設委員会などでも、「高さという景観の問題にこの条例は不充分ではないか」といった質問に対して、当局から、「『富山市中高層建築物の建築に関する指導要綱』で対処できる」旨の答弁がありましたが、答弁どおり機能しているとは言いがたいものがあります。

 景観、特に高さに対する問題は全国でも問題になり、京都市では、「『時を超え光り輝く京都の景観づくり審議』の『中間とりまとめ』を受けて、『歴史的都心地区と位置づけられた幹線道路沿道地区』は現行の45mから31mに,そして,職住共存地区は,京町家を中心とする歴史的建造物に調和し,風情ある歴史的町並みを形成するための高さとして、31mから15mに引き下げるという非常に思い切った規制に転換する。」として、市街化区域全域で高さ規制の見直しに着手し,18年度中に都市計画の手続きを終え,19年度の早い段階で,新たな規制を適用することになりました。

 これは、富山市の景観行政が遅れているというよりも、千年の都京都でさえやっと景観に対する取り組みがはじまったと見るべきで、いかに土地利用に制限を加えることについてのコンセンサスを得るのが難しいかを物語るものです。裏を返せば「地区計画」「建築協定」といった景観を守るための手法は、意匠や色彩の統一、緑化の推進といったまちづくりには適していても、高さの部分から景観を守る手法として住民にゆだねてしまうには無理があるのではないでしょうか。

 この一連のマンション建設問題をきっかけに、富山市として景観行政に本腰を入れる時期に来ているのではないかと考えますが、市長の見解を求めます。

3. 子育て支援について


本年3月「富山市次世代育成支援行動計画」が策定され発表されました。

 この行動計画は、合併した市町村がそれぞれ持っていた支援策を新市として取りまとめたものですが、その中から「放課後児童健全育成事業」と「地域児童健全育成事業」について質問いたします。

 富山市は、子育て支援の一環として「放課後児童健全育成事業」と「地域児童健全育成事業」を実施しています。特に「地域児童健全育成事業」は地域の中で、地域の皆さんの手によって子どもたちの居場所を提供するという富山市独自の仕組みです。また新規に「地域ミニ放課後児童クラブ事業」は始まりました。

 よく似た事業名ではありますが、それぞれ別個の事業であり、」事業提供者も違えば対象者も異なります。ところが富山市が発行している「『放課後児童健全育成事業』『地域児童健全育成事業』のしおり」では、家庭に対して「二つのサービスがあり、各ご家庭の状況に合わせて選んでいただくことができます。」と記載されています。

 「地域児童健全育成事業」は本当に子育て支援のために市が提供しているサービスなのでしょうか。もちろん法的にも予算的にもそのような位置づけでしょう。しかし、各地域での施設の違い、例えば「藤ノ木なかよし学級」では古くなった大きな講堂を使ってボール遊び・一輪車あそび・鬼ごっこ・折り紙・読書など大勢の児童が遊んでいました。「西田地方西の子会」では余裕教室を使った専用の部屋で室内遊びができる他、隣接してあるプレイルームと呼ばれる大きな部屋でボール遊びは無理ですが体を使って遊ぶことができます。一方「光陽こども会」は専用の部屋があるものの、体を使った遊びをするスペースはありません。

 また、実質ボランテアで児童のお世話をされている指導員の確保ができないなどの関係や先ほどのスペースの都合上で新1年生しか受け入れができない地域もあります。

 各地で地域事情に応じて地域の子どもの遊び場を懸命になって提供されている取り組みが「子育て支援のために市が提供しているサービス」なのでしょうか。むしろ福祉サービスというより地域活動そのものではないかと思います。それを、社会福祉法人やNPOといったいわばプロや専門家が実施している「放課後児童健全育成事業」と同列に扱うのはいかがでしょうか。

 「地域児童健全育成事業」を子育て支援のサービスと位置づけると、利用者からすれば「良質で均一なサービスを受けられるのが当たり前」という発想になって当然であり、指導をされている地域の方々からは「ボランテアで子どもを預かっているのに感謝の言葉もない」などと、お互いにとって不幸なコミュニケーションの齟齬が生じています。

 「富山市次世代育成支援行動計画」ではそれぞれの実施について「平成21年度まで何箇所増やす」「開設箇所を拡充する」「夏休み中の開設を何箇所に増やす」などの表現が使われていますが、数値目標だけを掲げても意味のないことです。

 「放課後児童健全育成事業」「地域児童健全育成事業」「地域ミニ放課後児童クラブ事業」についてもう一度事業の内容や成り立ちそして位置づけを議論して、再構築する時期に来ていると考えます。これらの事業について、特に地域活動としての「地域児童健全育成事業」について、どのような見解をお持ちか、答弁を求めます。

 また、4月14日の衆議院文部科学委員会で小坂文部科学大臣は、自民党の西本勝子議員からの「地域に戻った団塊の世代の協力も得つつ、地域の力を教育に活かすことについての大臣所見は如何か」という質問に対して「『子どもの居場所づくり』の中で、教員OBの力を借りながら、そういう居場所づくりで補習を行ったり、勉強したい子どもたちのアドバイザーとしての活動をしていただくような、そういう活動をここに込めることができれば、これはよいのではないかと考えている」と答弁をされています。勉強だけでなく「地域児童健全育成事業」の中で、地域の教員OBの力をうまく活用する仕組みづくりができないか、教育長の答弁を求めます。

答弁

森雅志 市長 答弁

 鋪田議員の御質問にお答えします。

 私の方からは、都市居住についてお尋ねのありましたうち1点と、景観行政について1点お答えし、その他につきましては担当部長から答弁申し上げます。

 まちなか居住推進事業についての評価、さらには周知不足ではないのか、ニーズの掘り起こしをどうするのかといったことについてお尋ねでございました。事業のあらまし、中身について改めて申し上げることもなかろうかと思いますが、コンパクトなまちづくりを進める一つの取り組み、誘導方策の1つとして、再開発事業あるいは拠点整備、公共交通の利用などとあわせて、まちなかの定住人口を増加させることが重要であるとの考えにち、昨年7月から、良質な住宅の供給を推進するため、まちなか居住推進事業をスタートさせたところでございます。

 事業の実績につきましては、さきに答弁申し上げたとおりの実績となっているところであります。評価としては、おおむね順調にこの事業が活用されているものと認識いたしております。また最近は、具体的な事業に対する相談も増えておりますので、今後、利用実績はさらに伸びてくるものと期待しております。

 平成17年度の予算執行の実績が伸びなかったことにつきましては、平成17年度中に完成を予定していた大型の集合住宅の物件が、事業者の都合により完成時期が延びたことなどが大きかったと考えておりますが、事業がスタートしてまだ1年足らずであり、今後とも、事業の周知に努めてまいりたいと考えております。

 先ほども答弁いたしましたが、昭和38年以降、毎年減少し続けておりました都心地区の人口が、わずかではありますが増加に転じておりますので、この事業を含めたいろいろな施策の相乗的な効果があらわれ始めたのではないかと考えております。

 次に、マンション建設問題をきっかけとして、景観行政に本腰を入れる時期に来ているのではないかとのお尋ねにお答えいたします。

 本市における景観行政の基本的な取り組みといたしましては、景観まちづくり条例を制定し、市民の景観まちづくり活動への支援や、大規模な建築行為等の審査を行っており、「表情豊かで魅力的なまちなみ」と映る良好な都市景観の形成を目指しているところであります。

 本年度は、景観まちづくり条例をさらに活用するため、景観形成基本計画を策定することとしております。この景観形成基本計画では、市全域の景観特性の現状把握、市全体の景観施策の体系化、景観形成で重要な地区の施策の提案、景観まちづくり推進区域、景観まちづくりの宝物などについて計画を立案するものであります。

 さて、近年、まちなか周辺部の低層住宅地において、高層マンションの建設計画が相次いでおり、都市計画法や建築基準法に適合しているものの、居住環境に与える影響について大変憂慮しているところであります。

 市街地環境の保全を目的とした建築物の規制につきましては、法の流れを見ますと、昭和45年に建築基準法が改正され、建築物を絶対高さで規制することから、用途地域の特性に応じた建ぺい率や容積率で規制することに変更され、本市も含め、全国的に運用されております。

 立法者の思い、あるいは現在の行政の思いとしては、この規制でコントロールができると想定されているわけです。しかしながら、想定外の計画が起きているものと受けとめております。果たして、ビジネスとしての経済性から考えて、広い敷地の中の一部に高いものを建てるという計画が、そもそも成り立つのかどうかということさえ心配しますが、しかし事業者は、そういう計画を前面に押し出していらっしゃるわけで、そもそも、ビジネスのあり方そのものが大きく変わってきているのではないかと思っており、非常に当惑をしております。

 加えまして、ぜひ事業者の方々には、大きなものを建てることによって、まちづくりに当事者として参画することになるわけでありますので、まちづくりの当事者としての良心の問題ではないかとも思う次第でございます。

 いずれにしましても、以上申し上げましたことから、現在は、建ぺい率、容積率に加えて、さらに土地利用に大きな制限を加えることとなる建築物の高さを規制するためには、1番に景観上特に重要な地域、2番に風致を保全する地域、3番に建築密度が特に過大になるおそれがある市街地で、良好な住環境を保全する必要がある地域、4番に住民が自分たちのルールを定めた地域など、特にその必要性がある場合に限定されており、現行制度では、「景観地区」「風致地区」「高度地区」「地区計画」等の都市計画決定が必要となっております。

 一方で、居住環境に影響を与えると思われる高層マンションの高さを、条例を定めて規制すればどうかという声もありますが、憲法上認められた土地所有者の権利を規制するため、法令を超える自主条例を制定することは、自治体に与えられている条例制定権の範囲を超えており、実効性を担保できないものと考えております。

 憲法29条の第2項では、「財産権の内容は公共の福祉に適合するように法律でこれを定める」と規定しておりますが、この条文の意味は、逆に規制をしようとする際に根拠となるものは、「法律または法の委任によるものである」と解釈されているわけでありまして、条例で固有の財産権を規制することは非常に困難だと思います。

 万一、全国の自治体の中にこういう条例を制定しているところがあるにしても、憲法との観点で訴訟を起こされると、おそらく憲法違反という判断になると思います。自治体は、順法性も求められているわけでありまして、憲法に抵触するおそれのある条例制定をすること、あるいは、そのことによって実効的に高さを規制しようとすることはできないと考えております。

 このため、高層マンションなど建築物の高さを規制することにつきましては、地域住民が主体となって、地区ごとのまちづくりのルールを定める地区計画や、建築協定を活用することが基本的に望ましいと考えており、これまでもホームページや出前講座などを活用して、住民の方々に地区計画制度の周知に努めてきた結果、これまでに14地区において、居住環境の保全を目的とした地区計画を定めてきたところであり、さらに、勉強会などへの支援を一層推進してまいりたいと考えております。

 しかし、昨今の相次ぐ高層マンション建設の課題に対応する居住環境の保全には、従来の地区計画に加えて、さらに広範囲に建築物の高さを規制できる既存の制度の活用について論議する時期に来ていると考えているところであります。

 「景観地区」「風致地区」「高度地区」などで、建築物の高さを規制することにつきましては、例えば、京都や鎌倉、金沢などの古都、特に景観上重要な地域、都市圏などの建築密度が特に過大になるおそれがある市街地などでの事例はありますが、本市として、個人の土地利用に私権の制限を加えることと、一方で守るべき保護法益──今言いました古都の保全とかさまざまなこと、この一方できちっと訴訟に堪え得る保護法益というものをどう構築していくのか、しっかりとした理論武装をすることが必要でございます。

 そういったことから、十分かつ慎重な検討が必要でありますので、他都市の事例を参考にするとともに、果たして、市民全体の意見が那辺にあるのか、私権の規制がいいという市民の声が大きいのか、私権の制限は嫌だという市民の声が大きいのかということも含めて、本市での適用の必要性や可能性、影響について検討してまいりたいと考えております。

 以上でございます

根塚俊彦 都市整備部長 答弁

 都市居住についてのうち、住宅取得価格から見た50万円の助成は、10年間で3,000戸の目標を達成するための仕掛けとしては十分ではないと考えられるが、助成額の見直しを検討しないのかのお尋ねにお答えいたします。

 まちなか居住推進事業は、富山市のまちなかにおいてにぎわいを取り戻すため、平成17年から平成26年までの10年間で約3,000戸の住宅供給を目標として、共同住宅の建設や住宅取得の促進を積極的に行うものであります。

 この事業における住宅取得支援の助成限度額50万円につきましては、従来から、旧富山市で実施しておりますヤングファミリー住宅支援事業による助成限度額が、5年間で合計30万円であり、旧大山町地区で実施しております新婚家庭住宅取得支援事業による助成限度額も、5年間で合計30万円であることなど、各地区でのこれまでの住宅取得支援事業の助成額や、近隣都市の状況を参考にしながら決めたものであります。

 事業の内容につきましては、まちなか居住を推進するため、よりよい制度となるよう、今後の都心地区の人口動態や申請状況の推移、説明会や申請、相談の際の市民や住宅関連事業者の方々の御意見も参考にしながら検証を行う必要があると考えておりますが、昨年7月の実施からまだ1年足らずでありますので、引き続き、普及・啓発に努め、事業の促進を図ってまいりたいと考えております。

 次に、多世帯住宅について、モデル的に上乗せ助成といった財政支援や建ぺい率、容積率の緩和などを行うべきと考えるがどうかにお答えいたします。

 今後、加速する少子・高齢社会においては、2世代、3世代が同居し、多様な世代が家族や地域を支え合いながら住み続けることは、大変重要なことであると考えております。

 また最近では、コーポラティブハウスやグループリビングといった新しいコミュニティーの形成による住まい方を求める人たちも、少しずつ増加していると考えており、多世帯住宅に対する支援など、多様なニーズにこたえる都心居住施策については、今後、調査・研究していく必要があると考えております。

 一方、建ぺい率、容積率につきましては、そもそも都心地区は、周辺地区と比較して建ぺい率、容積率ともに高く設定された地区であり、建築時の緩和を上乗せして行うことは、都市防災などの観点から慎重に取り扱うべき問題であると考えております。

 次に、低層住宅と中層住宅の混在の問題に関し、ミニ区画整理を活用するなど、住み分けについても具体的な対策が必要と考えるがどうかにお答えいたします。

 都心部に空き地や青空駐車場などの小規模な低未利用地が散在していることは、都市機能の集積やまちなか居住などの都市再生を進める上での阻害要因の一つになっており、これらの土地を集約して、一定規模の土地として有効活用することは望ましいことであり、土地の利用を促進するために、土地の交換、分割、合併を行うミニ区画整理の活用は有効な手法でありますが、制度上、整備すべき課題もあるものと考えております。

 このことから、平成18年度事業で低未利用地活用推進調査事業として、まちなかの現況土地利用調査、低未利用地有効活用方策の検討、支援制度の検討などの調査・研究を行っていくこととなっており、いわゆる不動産業に関連する事業者や税理士、あるいは法律に詳しい方々などからの御意見も伺いながら、具体的な対策も含め検討を行っていくとともに、国に対し、利用しやすい制度となるよう、制度上の要望もしていきたいと考えております。

 次に、都心部だけでなく、建築密集地における災害に強いまちづくりについて、今後の具体策を問うにお答えいたします。

 本市の都市計画は、都市を健全に発展させる目的のもとで、土地利用や都市施設、市街地開発事業を計画しており、防災対策につきましては、地域防災計画を策定し、災害時の活動体制や災害直後に実施する応急対策活動を定めております。

 災害から住民の生命・財産を守り、都市の機能を確保するためには、地域防災計画と都市計画が連携して災害に強いまちづくりを行っていく必要があるものと考えており、都市計画の分野では「まちの不燃化」を進めるため、市街地再開発事業や建築規制を行っているところであります。

 市街地再開発事業では、低層の木造住宅地が密集し、細分化された敷地を広く統合し、不燃化された共同建築物に建てかえ、快適で安全な都市環境を再生しております。また、建築規制においては、防火地域や準防火地域では、建築物の規模に応じて不燃性を有した建築物を義務づけ、その他の地域では不特定多数の人々が利用する建築物について、その建物の規模または用途によって不燃化を義務づけております。さらに、住宅の耐震性能につきましては、現行の耐震基準を満たしていない建物の所有者などに、耐震診断の必要性や耐震改修について、ホームページや説明会、出前講座などを通して、PR・啓発しているところであります。

 いずれにいたしましても、建築活動の大半は民間によって行われていることから、まちづくりにおいて民間の果たす役割は大きいものがあり、今後、災害に強いまちづくりに向けて、まちの不燃化と耐震化の普及・推進について指導・啓発に努めてまいりたいと考えております。

 次に、景観行政についてのうち、「住民組合法人」の情報はないかのお尋ねにお答えいたします。

 国土交通省では、国や地方自治体にかわって公共施設の維持・管理の権限と負担、景観規制などを住民の方々などで組織する団体「(仮称)住民組合法人」にゆだねる、新たな仕組みづくりが検討されていると仄聞しております。

 本市といたしましては、この仕組みが今後のまちづくり計画や整備、管理に影響があると考えられることから、今後、国の動向を注視しながら、引き続き、情報の収集に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

藪腰政輝 消防局長 答弁

 都市居住についてのお尋ねのうち、先般の火災を教訓に消防の面からハードの整備、現場での部隊編成など、出動態勢の再検討を求めるとともに、消防局はもとより消防団も含めた現場での消防力向上のため、図上訓練などを含めた訓練の充実を図るべきと考えるがどうかにお答えいたします。

 このたびの西町・総曲輪通り商店街火災の対応につきましては、出動車両32台、消防職・団員135名を投入した結果、極めて延焼危険の高い区域ではありましたが、全体として適切な消防活動が行えたものと考えております。

 しかしながら、今回の火災は中心市街地で、しかも、アーケードに囲まれた木造建物が密集した地域であったことから、現在、活動の細部にわたり検証を行っているところであり、今後、その結果を踏まえて出動態勢や部隊運用などについて検討を行うことにいたしております。

 また御指摘のとおり、消防力向上を図るためには、日ごろからの訓練の積み重ねが重要であると考えております。このことから、複雑多様化する災害に対応するため、従来からの訓練に加え、昨年からは訓練内容に状況変化を付加しながら、現場指揮者の状況判断、状況予測、意思決定などの能力を向上させるための訓練にも取り組んでいるところであります。さらに、今年度は、消防団との連携を強化するため、消防職員と消防団員の合同による災害別の図上訓練を実施することとしております。

 今後とも、訓練の充実を図りながら、的確な災害対応に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

西野信昌 福祉保健部長 答弁

 子育て支援についての御質問のうち、放課後児童健全育成事業、地域児童健全育成事業、地域ミニ放課後児童クラブ事業について、再構築する時期に来ているのではないか。また、特に地域活動としての地域児童健全育成事業についての見解を問うにお答えいたします。

 旧富山市では、留守家庭児童対策として、昭和43年度より留守家庭児童会事業を開始し、その後、留守家庭児童も含めた地域における児童の健全育成を図るため、この事業を再編し、地域児童健全育成事業として実施してきているところであります。

 また、平成14年度には、放課後の児童に関する諸課題について広く検討していただくため、富山市地域児童健全育成事業検討委員会を設置し、その検討結果を受け、新たに平成15年度から放課後児童健全育成事業を実施したものであります。

 さらに、これを機に、放課後児童健全育成事業は、小学校1年生から3年生までの留守家庭児童を対象に、保護者が仕事などにより昼間家庭にいない間、家庭にかわる生活の場の提供を目的とした事業として、また、地域児童健全育成事業は小学校に通うすべての子どもたちを対象に、子どもたちが自主的に参加することができる遊びの場の提供を目的とした事業として、それぞれの事業を明確に位置づけしたものであります。

 なお、放課後児童健全育成事業につきましては、受け入れ定員、開設日数、保育士等の指導員の配置、面積基準等を定め、社会福祉法人、NPO法人、学校法人などが事業を実施する場合において、開設規模に応じて補助金を交付しております。

 また、地域児童健全育成事業につきましては、各校区に、地域の住民や関係諸団体の代表者で構成する運営委員会を設立していただき、市の委託事業として実施しているものであります。

 今年度、新たに設けました地域ミニ放課後児童クラブ事業は、これら2つの事業を補完するものとして、少ない利用人数や開設日数などの場合でも、町内会やボランティア団体等に地域の自主的な子どもの居場所づくりを行っていただくための補助事業であります。

 このように、それぞれの事業の目的が異なること、また、地域ミニ放課後児童クラブ事業は、今年度に制度を設けたばかりであり、今後の状況を見守りたいことなどから、これらの事業の再構築につきましては、現在のところ、考えていないところであります。

 また、お尋ねの地域児童健全育成事業につきましては、地域の協力を得て、それぞれの実情に合った事業として実施しており、今後とも、地域に根ざした事業として推進してまいりたいと考えていることから、他の2つの事業と同様、子育て支援策として、その拡充に努めてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

吉川實 教育長 答弁

 子育て支援についての御質問のうち、地域児童健全育成事業の中で、地域の教員OBの力をうまく活用する仕組みができないかにお答えいたします。

 地域児童健全育成事業は、校下運営協議会によって主体的に運営されております。指導員につきましては、その地域の中で教員OBも含めて人選が進められていると聞いております。

 現在、教員OBの皆さんには、学校の教育活動の中で大いに活躍していただいております。例えば、初任教員に対する指導者とか授業を中心に担任の補助を行うスクールサポーター、心に悩みのある子どもや親の相談員など、さまざまな面で活躍していただいております。

 今後は、地域児童健全育成事業の概要につきましても周知し、活躍していただく場が一層広がるよう働きかけてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

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