議会レポート

平成22年12月議会・一般質問(質問原稿)

1.行政用語について

(専門用語について)

去る11月18日の参議院予算委員会で、官房長官が『暴力装置』という言葉を使い、抗議を受けたことから、直ちに訂正し謝罪するという出来事がありました。普段耳慣れない言葉でしたので、国会内外で大きな波紋を呼びました。

『暴力装置』という言葉そのものは、政治哲学、政治学おいて、主権国家を定義する際に用いられる言葉であり、官房長官は国会議員であると同時に行政庁に所属するので立ち位置は微妙ですが、職業政治家たる国会議員が国会の場で使う場合においては、問題が無いと考えます。

皆さんがあまりにも騒がれるものですから、参議院インターネット審議中継を繰り返し観てみましたが、シビリアンコントロールという文脈の遣り取りの中で、「暴力装置でもある自衛隊、ある種の軍事組織でもありますから、これは、シビリアンコントロールが効かなければならない」と答弁されていました。

後で、軍事組織は実力組織と言い替えられましたが、この方も、政権に入った途端、自衛隊の存在を正面から受け止めて、軍事組織として認識をあらたになさったのかと、政権与党という権力は物凄いものだと妙に感心すらしました。

しかし、テレビの向こう側の皆さんや、『暴力装置』という言葉を知っていると思われるマスコミでさえ、暴力という言葉に驚き、怒りを覚えたのでした。

ですが私は、本来問題にすべきは、尖閣諸島沖における中国漁船の衝突事件への対応や、北朝鮮の砲撃をめぐる対応に、我が国の領土・領海を守る意識がまるで無いことを露呈してしまった現政権の能力であると考えます。

話が随分横道にそれましたが、政治や行政の場で使われる専門用語は、使い方が間違っていなくても、大変な影響を及ぼすことがあるのだと考えさせられました。

さて、国を離れて富山市における行政用語について質問します。

公共施設の建替えの際に使われる『改築』と言う用語は、法律専門用語・建築専門用語としては「現存する建築物の主要構造部全部、または大半を改めて造り直すこと」とされています。また、辞書によれば、「建物・建造物の全部または一部を新しく造り直すこと」とされており、建替えを改築と言うことは自体は間違っていません。

しかし、一般には全部を作り直す場合は『建替え』、一部造り直すことを『改築』と使い分けています。一般に使う用語と行政で使う用語に解釈の違いがあると混乱を招くこともあります。

先日、ある学校の耐震化についての会議に出席したところ、「この学校が改築で、ここより新しい学校が大規模改修なのはおかしい」という発言がありました。大規模という言葉のせいでしょうか、「大規模改修」が建替えで、「改築」が耐震補強工事と思っている方も多いようです。

一般に使われる用語と行政で使われる用語の解釈が異なる事や、馴染みのない専門用語が使われることで、市民の混乱や誤解を招くことの無いようにすべきと考えますが、当局の見解を求めます。

(外来語の読み替えについて)

平仮名の「まちづくり」という用語も便利に使われてきましたが、基盤整備を指すものか、ソフトを指すものか、「町」のまちなのか、「街路」のまちなのか、人口密集地や都会を指すのか、曖昧なまま使われています。

後程質問をする予定ですが、平仮名の「まちづくり」という言葉のもと、商業振興と都市整備の垣根が曖昧なまま進められた結果、様々な問題も起きていると考えています。

視覚に柔らかい印象を訴える効果を狙ってか、最近は平仮名が多く用いられ、ついには平仮名の市名も登場するなど驚かされることも多のですが、今ほど述べた平仮名のまちづくりも、あえて漢字を入れないことで様々な意味合いを持たせることに成功した面もあるでしょうし、平仮名の市名にも同じことが言えるでしょう。

しかしながら、ある者は人口集積地を想像してまちづくりを考え、ある者は町を想像してまちづくりを考え、又ある者は都市基盤整備を想像してまちづくりを考え、ある者は商業振興を想像してまちづくりを考えることで、今やろうとしているまちづくりとは何かと問われた時に、皆がばらばらな思いでまちづくりを進めていたと言う事になってしまうのではないでしょうか。

平仮名の行政用語だけではなく、片仮名の用語も大体の意味は想像できますが実はよく理解されないまま使われています。

言葉の響きの良さと、代わりになる言葉が無いからでしょう。私も一般質問で外来語を頻繁に使いますが、わざわざ解説を入れて質問していたところ、却って分かり辛いと先輩方から指摘をうけて、最近は片仮名読みのまま使っています。まさにジレンマ、板挟みです。

そこで、一時期、外来語の読み替えというのが注目されましたが、富山市において、現在どのようになっているのか、答弁を求めます。

(外来語の用語について)

例えば、「コンパクトシティー」や「コンパクト」なまちづくりという言葉。この場合共通するのは「コンパクト」で、これなら誰もが理解できます。しかし、二つの言葉がどのように違うのか、以前にも質問したが私にはよく理解できませんでした。最近では「エコ」という言葉も、環境を指すのか、経済性を指すのか、使われている場面で意味が異なります。

しかし文句を言っても今更使用を止める訳もいかないのが現状です。既に定着してしまったからです。昨年の12月議会で鍵括弧付の「地域主権」について質問した際に市長から、「私自身は一言で言うとどっちでもいいことで、主権を壊そうとしている趣旨で使っているとは思いませんので、そう重大事だとは思いません。」との答弁がありました。しかしながら「地域主権」という用語は、鍵括弧を離れ、本来の意味を離れてすっかり市民権を得てしまいました。

そこで、このような外来語由来の新しい言葉を行政で用語として使用するにあたり、検討がなされているのか、答弁を求めます。

(表記について)

富山市だけではなく、「子供」を、「子」が漢字、複数を表わす接尾語「ども」が平仮名と言う様に、単語の一部を平仮名にして用いています。このように単語の一部を漢字から平仮名にした用語が多く見受けられます。

常用漢字と当用漢字にない場合に、平仮名表記とする場合もあるでしょうが、中には言葉狩りの如き表記替えもあります。

そこで、行政用語の表記について、富山市としてどのような指針があるのか、答弁を求めます。

2.商業施策について

本年3月の一般質問で、企業実態調査を行うと答弁がありました。

さらに、「本市といたしましては、この調査が商店数や個店の売上げの増加、さらには商店街の一層のにぎわい創出につながるよう、調査結果を詳細に分析してまいりたいと考えております。そのことにより、商業者のニーズを的確に把握し、中長期的な目標値を設定するなど、より効果的な商業振興施策を展開してまいりたいと考えております。」と答弁がありました。

そこで、企業実態調査についてどのような進捗状況にあるのか、また、調査結果の分析をどのように施策として反映させていくのか、答弁を求めます。

私は、建設委員会所属ですが、商業振興に関する課題を都市整備部所管の事項として議論していることに違和感を持ち始めています。

都心地区への新規出店促進のための補助金やファザード整備のための補助金の取り扱いなど、事業のほとんどが都市整備部となっています。さらに、「株式会社まちづくりとやま」が指定管理者となっていることにも、本来のまちづくり会社の役目として正しいのかという疑問も感じ始めています。

都市基盤整備として商店街との関連がひと段落しつつある今、このような組織の在り方、都心地区における商業施策のみを切り取って都市整備部が担うという組織の在り方を見直す時期にあると考えますが、見解を求めます。

3.補助金について

都心地区への新規出店促進のための補助金について前述しましたが、補助金の交付を受けながら間もなく閉店する事例や、要綱では夜間のみの営業は交付対象外となっているにもかかわらず、夜間のみの営業と判断されてもやむを得ない事例があります。また、事実上、対象地区から対象地区への移転と判断されてもやむを得ない事例もあります。具体な質問は委員会で行いますが、都心の賑わい創出と考えれば、むしろ、夜間営業の飲食店や都心地区にとどまるための移転に対しての補助制度があってもいいと考えます。

このように、補助金を交付した後の検証を行う仕組みが無い為に、せっかくの制度が無駄になり、本来必要とされる対象者に行きとどかないと言う結果になっている場合もあるのではないでしょうか。

補助金の中には、地域の繋がりを維持するためのものや、芸術文化に対する支援のための補助金のように、交付後の検証が困難なものもあるでしょう。

そこで、富山市の補助金制度の体系についてどのようになっているか答弁を求めます。また、補助金の性格によっては、交付後の検証を行うように制度を改めるべきと考えますが、答弁を求めます。

4.学校の耐震化について

富山市における学校施設の耐震化については、政権交代の余波を受け、基本設計が完了しながら実施設計に至らぬもの、実施設計が完了しながら工事に着手できないものがある状況です。

そこで以下3点について質問いたします。

  1. 早急に耐震化が必要な学校施設はどのくらいあるのか
  2. そのうち耐震化の計画が立てられながら基本設計が完了したものの実施設計に至らぬ学校施設、実施設計が完了しながら工事に着手できない学校施設はどのくらいあるのか
  3. 平成22年度末での耐震化率はどのようになると見込んでいるのか

以上、答弁を求めます。

学校施設の耐震化が遅々として進まぬ原因は、ひとえに国の予算が確保されないことによるものですが、これまで、学校施設のみならず、公共施設から住宅まで幅広く耐震化を進めることが出来たのは、自民党政権下での地震防災対策特別措置法の改正によるところが大です。

学校施設の耐震化に関しては、市町村の財政負担軽減のため、国庫補助率の更なる嵩上げにより、公立の小学校、中学校、幼稚園、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部、中学部及び幼稚部のIs値0.3未満の校舎、体育館、寄宿舎については、耐震補強が1/2から2/3へ、改築が1/3から1/2となったほか、国庫補助率の嵩上げ対象となった施設については、起債充当率が75パーセントから90パーセントへ拡充され、地方債の元利償還金に対する地方交付税充当割合も50パーセントから66.7パーセントと拡充されました。

しかしこの措置は、平成22年度までの時限措置であり、状況を調べてみると、文部科学省を始めとして関係各省庁も、最終的なとりまとめをしている内閣府も、議員立法による改正であったこともあり、目下静観の構えです。このままでは、仮に国で予算がついても自治体は自主財源の目途がたたず、全国で耐震化の速度が停滞してしまう恐れがあります。

富山市議会でも、3月定例会での我が会派の代表質問で取り上げ、「公立小中学校施設の耐震化を促進するよう求める意見書」も採択いたしましたが、平成22年度に引き続き平成23年度富山市要望にも盛り込んだところです。

全国市議会議長会においても要望されているところであり、このまま与党が動かなければ、自民党が主導して議員立法により時限措置の延長をするよう県選出国会議員を通じ働きかけているところです。

そこで、以下3点について質問いたします。

  1. この時限措置が延長されなかった場合の、富山市における学校施設の耐震化に与える影響についての見解
  2. 富山市としても、また全国市長会としても時限措置の延長を含めて、耐震化の促進を求めるように働きかけるべきと考えますが、これについての市長の見解
  3. 市長会として現在どのような取り組みと議論がなされているかについて、市長の答弁

以上を求めます。

5.保育所の施設整備について

(エアコンの設置について)

9月定例会で、南議員からの保育室へのエアコンの設置についての質問に対して、「猛暑日でも通常の保育を実施できる環境を整え、保護者の方が安心して子どもを預けることができる保育所とするため、冷房設備につきましては、必要性の高いところについて重点的に整備することを、今後検討してまいりたいと考えております」との答弁がありました。

今年の夏は30年に1度の猛暑といわれ、8月だけで最高気温が30度以上の日が30日間、そのうち35度以上の日が13日間となっています。実は、平成19年も30度以上の日が25日間、うち35度以上の日が14日間もありましたし、平成18年も30度以上の日が28間日、平成17年も30度以上の日が23日間と、酷暑は当たり前になりつつあります。

そこで、保育室へのエアコンの設置についてどのような整備方針を検討されているのか、答弁を求めます。

(施設整備について)

市立の多くは昭和40年代に建設され、老朽化が進んでいます。

昨今の保育ニーズの多様化に施設面で十分なものとは言えません。また、敷地が狭隘(きょうあい)なため駐車場が確保できず、見送り時の交通事故も心配されるところです。

特に都心地区においては現地での建替えも困難、移転新築する敷地の確保も困難という状況で、このような理由から民営化の検討にあたって対象から外れた施設も多くあると考えられます。
国の整備方針として民間保育所への施設整備に補助金は出すが、公立保育所には地方交付税措置のみという状況で、老朽化した保育所の施設整備は、富山市の保育施策において大きな課題と言えるでしょう。

一部の保育所においては統合の上新築するという手法も採られていますが、これら老朽化が進む保育所や、施設面で保育ニーズの多様化に応える事が難しい施設の整備について、見解を求めます。

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