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さよなら未沙のえる - 宝塚歌劇星組公演『オーシャンズ11』

オーシャンズ11ポスター
オーシャンズ11ポスター

宝塚歌劇星組公演『オーシャンズ11』東京千秋楽をもって、宝塚史上に残る名バイプレイヤーである、専科の未沙のえる(みさ のえる)さんが定年により退団されました。

未沙さんの舞台を初めてみたのは、雪組公演『ソルフェリーノの夜明け』で演じた、野戦病院となった教会で、敵味方の別け隔てなく傷病者の手当をする酔っ払いの医師ルニオール・ハーベルマン役でした。

名コメディエンヌで、シリアスな父親役から悪役もこなせるし、ダンスや歌も軽やかにこなす。脚本が暗かったり、深刻だったり、或いは凡作だったりしても、ひとたび未沙さんが登場すると空気を換えられる。

謙虚な方だから、コメディーも出過ぎず引っ込まず、下品にならず。そんな未沙さんの退団作品『オーシャンズ11』で演ずる元カリスマ詐欺師のソール・ブルーム役はぴったりでした。フィナーレの大階段降りでは、主役よりも大きな拍手が沸き起こり、すべての観客が未沙の名演技を讃え、退団を惜しむかのようでした。

『オーシャンズ11』は、同名の映画を小池修一郎さんが脚本・演出し、主役は、ダニエル・オーシャン(映画ではジョージ・クルーニー)役に柚希礼音さん、テス・オーシャン(映画ではジュリア・ロバーツ)役に 夢咲ねねさん。脇をラスティー・ライアン(映画ではブラッド・ピット)役の涼紫央さんが固めます。

柚希さんは、内罰的な役が続いた気がしますが、今回は、久し振りに本人のキャラクターに合った配役で、ちょっと悪戯っ子な部分が残る天才泥棒・詐欺師を好演。

涼さんも、オーシャンの右腕ラスティーのとぼけたカッコいい男役を快演。トップスターをしっかり支える実力派の2番手がいる組は、安心して舞台を観ていられます。

夢咲さんは、柚希さんにひたすらついて行くキャラから脱皮して、大人の女性を演じていました。彼女の奇跡的なスタイルとゴージャスな雰囲気がなければテス役は成立しなかったかも、もっと言えば、この作品のようなおしゃれなアメリカ映画を舞台化するのは無理だったかもしれないとさえ思いました。

そのほか、敵役のカジノオーナーであるテリー・ベネディクト役の紅ゆずるさんは、こんなに存在感があったんだと感心しましたし、ライナス・コールドウェル役(映画ではマット・デイモン)真風涼帆さんも、トップスターになっていく雰囲気を持っていました。それから、白華れみさんも、怪しげなイリュージョンスターのダイアナ役(宝塚版オリジナル)で思いっきり弾けていました。美人ですが、花組の桜一花さんのような別格娘役になっていくのでしょうか。

感動して泣くとか、メッセージがあるとかではなく、とにかく徹底的した娯楽作品に仕上がっていて、誰が見ても楽しめる作品でした。まぁ、こういう作品もたまにはいいでしょう。

ただ一点だけ、これからはエコを売り物のカジノだ!とか、テスがエコプリンセスと呼ばれる歌手だったり。ひょっとすると小池流の毒のきいた社会風刺だったりして...

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