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あの名作が蘇る、宝塚歌劇宙組『風と共に去りぬ』

公演ポスター
公演ポスター

10月に宝塚大劇場で宝塚歌劇団宙組公演を観劇してまいりました。宙組を観劇するのは、凰稀かなめ・実咲凜音トップコンビが就任して初めてで、平成23年暮れに前任者の大空祐飛、野々すみかトップコンビ主演『クラシコ・イタリアーノ/NICE GUY!!』を東京宝塚劇場で観劇して以来です。

作品について

原作はアメリカ南北戦争時代を舞台にしたマーガレット・ミッチェルの長編時代小説『風と共に去りぬ(原題::Gone with the Wind)』を植田紳爾脚本・演出で宝塚歌劇団がミュージカル化したものです。ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブル主演による映画が有名で、10代後半に『哀愁(原題:WATERLOO BRIDGE)』という映画でヴィヴィアン・リーのファンになった私は、テレビやビデオで何度も観た作品です。

宝塚では昭和52年(1977年)月組で初演以来何度も再演されていて、来年は月組で専科の轟悠を迎えて公演されます。

今回の作品は所謂バトラー編で、レット・バトラーがスカーレット・オハラのもとを離れてゆく場面で終わるので、映画などをご存じの方は肩透かしを食らった感じになるかと思いますが、そこはバトラーが主演の舞台ということで、原作がある場合の宝塚作品にはよくあることです。

また、スカーレットを朝夏まなとさん、七海ひろきさんで役替わりするほか、アシュレをこの作品で退団する悠未ひろさん、朝夏まなとさんで役替わりする、A・B二つのパターンで上演されています。

出演者について

主演の凰稀さんを初めて舞台で拝見したのは、星組2番手スター時代の『愛と青春の旅立ち』で、映画では名黒人俳優ルイス・ゴセット・ジュニア演じる鬼軍曹エミール・フォーリー役。

凰稀さんは宝塚歌劇歴代屈指の美貌とスタイルを誇るスターですが、美しすぎることと、どちらかといえばアニメ声でどすの利いた声が出ない彼女が鬼軍曹をどのように演じるのか興味津々でした。

そこは雪組の若手時代から癖のある役もこなしてきただけあって、映画の軍曹デフォルメして全く別のオリジナルキャラクターに仕上げていて、たいそう感心した覚えがあります。今回も、凰稀さんとは正反対のキャラクターであるバトラーを、見事に作り上げていました。特に、スカーレットとのすれ違いで酒に溺れるシーンは圧巻でした。

スカーレットは朝夏さん、七海さんの役替わりでしたが、私が観たのは七海さんスカーレットバージョン。朝夏さんのスカーレット役は当然としても、七海さんは異例の大抜擢です。

若手男役が女役を演じるだけでも大変なのに、主役の一人であるスカーレット役はさぞかし大変だったと思いますが、場面場面に一貫性がなく、役をつかみ切れていない感はあったものの、体当たりの演技は好感が持てましたし、むしろ型にはまらないことでより人間臭いスカーレット像となったように思えました。

朝夏さんのアシュレは馬鹿馬鹿しい位の好青年で、はまり役。また、低い声ががらがらになってこもってしまう発声が大きく改善(花組時代の「長い春の果てに」あたりからよくなってきていましたが)されて、台詞も歌唱もとても心地よく耳に入ってきました。容姿も素晴らしいので、トップスターになって舞台の中心に立つ日が楽しみです。

ベル・ワットリングは緒月遠麻さん。雪組時代から温かみのある芝居が大好きでしたが、癖のあるマダム役を熱演。さすがです。

悠未ひろさんは退団作品で、アシュレとルネの役替わり。私が観たのはルネ役だったこともありますが、役不足でもったいない印象でした。ルネ役を誠実に演じている姿を見てせっかくのスターの退団なのだからもう少し配慮があってもよかったのではと思いました。

さて、トップ娘役の実咲さんについては、ヒロインではないメラニー役ということでまたもや主演とは絡まない作品で少々気の毒ではありますが、宝塚歌劇ではこれまでもメラニーはトップ娘役が演じてきたので致し方ないところです。

以前感じた、普通に美しいがゆえの押し出しの弱さ、存在感の薄さはなく、確実な演技や歌唱で十分光を放っていたと思います。残念ながら次回作は『ベルサイユのばら―オスカル編―』ということで、またしてもヒロイン役ではないので、出来れば次はちゃんとしたヒロインを演じさせてもらいたいものです。

ただし、フィナーレのダンスはちょっと頑張って欲しいい(花組時代はもっと踊れていた気がするので)と思いましたが、まだまだ若いのでこれからに期待いたします。

そのほか、伶美うららさんはスカーレットの心の本音を語るスカーレットII役。ちょっと固い感じもしましたが、お転婆なスカーレットの心を好演。何より美しく存在感があります、流石トップ娘役候補。

久しぶりの宙組でしたがとても良い公演でした。

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