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C型肝炎訴訟についての雑感

  • 鋪田博紀

かって在籍した会社の上司に肝炎を患った方がいた。インターフェロンを使った治療で現在は元気になられたが、治療の副作用(ご本人の表現によれば)で気力がほとんど無くなり、また治療頻度も多く仕事もままならない状態で、会社の理解が無ければ今の自分はなかったろうとおっしゃっていた。
会社の理解を得られず職を失っていたら、高額な医療費の負担はとうていあきらめざるを得ないということになるし、実際そのような人は相当いらっしゃるかもしれない。

その上司であった方と久しぶりに再会しそんな話をしていたところへ、今回のC型肝炎訴訟の和解決裂がニュースとして飛び込んできた。

つらい治療を受けながら裁判を闘う原告団が連日テレビで国民に訴え、いよいよ政治決断かと思いきや肩透かしを食らわせるような政府の回答にテレビの前の国民は大いに怒り、原告団に同情したことだろうし、私も同様に、政府の対応に疑問を持った。

けれどもよくよく考えると、訴訟の背景にある基本的な知識も持たず、今回の訴訟は、薬害エイズ訴訟の時と同じ構造の薬害(犯罪であった)でありそれをあぶりだすための訴訟なのか、それとも日々苦しんでいる肝炎患者の治療費の軽減が目的のものなのかよく理解しているわけではなかった。

思うに原告団の正義感(自分たちだけではなく潜在的に苦しんでいる人たちをも救済しようという)が勝りすぎて、訴訟の目的が大きくなりすぎていった感は否めないというのが正直な感想です。

薬害がなぜ繰り返されて、どのようにすれば防いでいけるのかという問題、そしてその責任の所在を明らかにし、責任をどうとらせるのかという問題と、患者の医療をどのようにしていくのかという問題が同じ画面の中で切り分けされずに報道(原告団の戦略なのかもしれませんが)されるのは、結果としてますます事の本質から眼をそらすだけになってしまうのではないか、問題の解決から遠のいていくのではないかと心配です。

事態を十分把握しているわけではないのですが、現時点での思いを書き記します。

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