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蘭寿とむさんのトップお披露目公演、宝塚歌劇団花組公演『ファントム』

宝塚大劇場にて
宝塚大劇場にて

先日宝塚大劇場で、花組公演『ファントム』を家族で観劇してきました。蘭寿とむ・蘭乃はな新トップコンビお披露目公演でした。

ガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』を原作に、アーサー・コピット(脚本)とモーリー・イェストン(作詞・作曲)により制作されたミュージカルです。宝塚版は、潤色・演出を中村一徳さんが担当しました。

作品について

以下は、結末を含んでいます。

一般的には、ロンドンやブロードウェイでロングラン公演をしているアンドリュー・ロイド=ウェバーが制作した『オペラ座の怪人』(映画化もされている)のほうが有名で、劇団四季が上演しているのもこちらです。

小説『オペラ座の怪人』が原作の舞台、映画は数多くありますが、アンドリュー・ロイド=ウェバー版『オペラ座の怪人』が一番原作に近いようです(映画版しか観たことがありませんが)。

宝塚歌劇団が上演する『ファントム』は、主人公がファントム(エリック=オペラ座の怪人、蘭寿とむ)で、ヒロインがクリスティーヌ・ダーエ(蘭乃はな)であるということ以外はほとんど共通点が無く、かわりに原作にはないファントムの実の父(後半に明らかにされる)であり、カルロッタ(桜一花)・アラン・ショレ(愛音羽麗/華形ひかるの役替わり)夫妻に取って代わられるまでオペラ座の支配人だったジェラルド・キャリエール(壮一帆)が登場し、ファントムとクリスティーヌの愛に加え、ファントムとキャリエールの親子の物語が中心になった作品になっていました。

登場人物の設定も対照的です。

原作のファントムは、醜い容姿のため両親からも受け入れてもらえず、自らの力(建築や奇術など)で各地を転々。建設にかかわったオペラ座の地下に様々な仕掛けを作り、そこに棲みつきます。

自分で棲みついたので、ここから抜け出してオペラ座以外の街などあちこちに出没もします。

一方宝塚版のファントムは、若きキャリエールと(華形ひかる/朝夏まなとの役替わり)オペラ座のプリマドンナであるベラドーヴァ(芽吹幸奈)の禁じられた恋から生まれた子(幼いファントム:実咲凜音)ですが、母から愛情を注がれ育ちます。

しかし、母の死に伴い、醜い容姿とその出生の秘密によりファントムの存在を隠さざるを得なくなった、父キャリエールによって、オペラ座の地下に匿われるように住むようになりました。オペラ座の地下以外に住むことが許されなかったのです。

地下と地上を繋ぐ唯一の存在がキャリエールだったように感じました。だからこそ、彼がオペラ座を解任されれば、ファントムも生きては行けなかったのでしょう。

正体が明かされそうになった時、警察の包囲網の中でファントムはキャリエールに自分を撃つよう嘆願し、キャリエールの手により絶命します。ファントムの人生の幕引きであると同時にキャリエール自身の人生の幕引きでもありましたが、亡き最愛の母の面影を湛えるクリスティーヌの腕の中で息を引き取るファントムは幸せな表情でした。

音楽に出会えたこと、キャリエールの手で天国へ行けること、一瞬であってもクリスティーヌに愛されたことで、醜い自分が生まれた理由を見出した瞬間でした。

出演者について

花組は初観劇で、生で観たのは宙組時代の蘭寿さんだけという、不安半分・期待半分という状態でしたが、とても素晴らしい作品でした。

情熱的な大人の男役が持ち味の蘭寿さんにファントムが似合うのか不安でしたが、純粋な少年のようなファントム像は斬新で、彼女の演技の幅に関心しました。得意のダンスシーンもしっかりあってファンとしては大満足。本当にカッコいいトップスターです。

また、天使のような歌声を持つクリスティーヌ・ダーエを、正直歌に不安があるという蘭乃さんに演じられるのかという点も心配でした(DVDやテレビですら観たことはなかったけれど)。

たしかに高音域で辛そうでしたが、「You Are Music」での蘭寿さんとのハーモニーは相性の良さを感じましたし、「My True Love」も十分感情がこもっていました。それよりも、彼女の持つ純粋な少女性が十分生かされた芝居で、いっぺんにファンになりました。大化けする可能性を感じました。

壮さんのキャリエールは、ファントムが少年ぽいせいもありますが、蘭寿さんと同学年ながらしっかり親子を感じられる抑えた渋い演技。親子の名乗りを上げるシーンで歌われる「You Are My Own」の声量と迫力にただただ涙しました。

テレビで観た範囲ではチャラい役が多かったのでこんな芝居もできるのかとただただ驚きましたし、トップスターになってもいいオーラがありました。

もっと書きたいのですが、最後にカルロッタを演じた一花ちゃん。いくつかの出演作品をテレビで観たので実力は承知していましたが、こんな悪役を、どこか憎めないデフォルメされたアニメの敵役のように演じてました。快演なのだけれどやり過ぎない絶妙のお芝居と歌。

花組の大ファンになって帰ってきました。

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