宝塚歌劇団花組公演『復活』で、蘭乃はな熱演
宝塚歌劇団花組公演「復活 -恋が終わり、愛が残った-/カノン-Our Melody」(主演:蘭寿とむ、蘭乃はな)を、宝塚大劇場で観劇しました。
「復活」は、ロシアの文豪トルストイの小説をミュージカル化したもので、昭和37年に、菊田一夫作演出により、春日野八千代、那智わたる主演で「カチューシャ物語」として上演されたそうですが、今回は、石田昌也作演出による新作です。
今回は、物語の要となるカチューシャ役が、宝塚では珍しい、知性も教養もあるロシア貴族の使用人から人生を誤ったやさぐれ女に転落するという難役に蘭乃はなさんが挑戦。
「復活 -恋が終わり、愛が残った-」
カチューシャは、短い軍の休暇中に屋敷を訪れたもう一人の主人公ネフリュードフ(蘭寿)と恋に落ちたたものの、別れ際に100ルーブルを渡され、金で買われた女だと知り絶望。ネフリュードフの子を身ごもりながら子供は早逝。酒浸りの娼婦となり、さらには冤罪とはいえ殺人罪でシベリア送りの判決。ネフリュードフの贖罪(或いは愛?)からの計らいで、待遇のよい医療刑務所に移されたものの、囚人とトラブルを起こし、シベリアへ移送が決定...
裁判所ではつばを吐いたり、檻の中で、面会を求めるネフリュードフに悪態をついたりタバコをたかり吸って見せたりと、可憐な娘役としては異例の演技でしたが、幕開き直後の花道で、手錠をかけられ凄んでみせる姿がスポットに映し出された瞬間の存在感には驚かされました。
ただやさぐれ女を演じるだけではなく、すさんだ中に隠している清廉な一面がちゃんとうかがえる、いい演技でした。
一方のネフリュードフは、高級将校にして青年公爵。
自分の軽はずみな行動から、恋するカチューシャが人生を転落してゆく姿に、最初は贖罪から、やがては本当に彼女を愛し、身分も財産も投げ打って人生を彼女に捧げようとします。その行為が例え彼女に受け入れられなくても、彼女が知らなくてもただひたすらに。
下手に演じれば、お坊ちゃまのただの思い上がりかストーカーになるところですが、さすがは蘭寿とむさんです。誠実に演じられていました。
そして、もう一人の主人公とも言える、ネフリュードフの親友シェンボックには壮一帆さん。「ファントム」で演じた、ジェラルド・キャリエール役で見せた懐の深い人物像を演じる演技が素晴らしい。
主演と互角に渡り合える2番手がいることは、花組の強みです。
「カノン-Our Melody」
レビューの方は、三木章雄作による新作で、最近多い、圧倒的な群舞で押し切るとか、テーマを決めた統一感のあるショーではなく、場面ごとに特徴を持たせ、出演者を絞って見せる、どちらかというと古典的な内容で、難を言えば、このあとの全国ツアーでも上演されるためか、舞台セットがやや地味(全国ツアーでまわるホールは、専用劇場ではないため、セリや盆という宝塚ならではの舞台装置が使えない)な印象もありましたが、一人一人の踊りを堪能できる良いショーでした。
ここでも蘭乃さんのスマートで、以外にも力強い踊りが目を引きました。ダンスに定評のある蘭寿さんと相性も良いようです。
1月30日まで宝塚大劇場で上演した後は、2月10日から3月18日まで東京宝塚劇場で上演されるので、本当はもう一度観劇したいところですが、かなうかどうか?
ちなみに写真は、プチミュージアムで公開中の「ファントム」展のものです。
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