ブログ

「技術戦としての第二次世界大戦」

  • 鋪田博紀

正月早々親戚の葬儀で埼玉へ行く車中で読むためにキヨスクで買ったのが「技術戦としての第二次世界大戦」(兵頭二十八・別宮暖朗共著、PHP文庫)でした。

軍学者の兵頭二十八氏と歴史学者である別宮暖朗氏の対談形式で、日本軍の軍事技術力と戦術・戦略を列強のそれと比較して、敗因をさぐるというものですが、むしろ、官僚組織としての軍部の欠陥や近衛文麿首相などの政治力、外交力のなさなどを鋭く指摘した内容となっています。

ぱっと見ると個々の兵器のスペック比較とその運用の仕方が事細かに記述されているため、単に「軍事ヲタク」向けととらえられそうな部分もありますが、辛抱強く読んでいただければ、言わんとすることが理解していただけると思います。

著者のお二人ともあとがきでも繰り返し述べていますが、敗戦の原因は近衛文麿首相が施行した「国家総動員法」により日本が社会主義(国家社会主義)となり、それまでは、ヨーロッパ先進国のGDPを追い越すのは時間の問題と見られていた日本が、官僚支配の統制計画経済経済になったとたん経済成長が止まり、民間の軍需産業の競争がなくなり軍事技術の向上も止まったためと、結論付けています。

また、官僚機構としての陸軍省と海軍省の予算獲得競争(省益拡大)や同じ省でも部署同士の権益争いがもたらした戦略なき国家運営が戦局拡大ひいては敗戦につながったと断定しています。また、軍人というより官僚としてまた政治家としての東条英機について厳しく批判しています。

あれから60年、この国は変わったのだろうか?有権者から信任を受けた私たち政治家の力と、同時に本当に民主主義の権利を行使しようとする有権者の覚悟が問われる時代なのではないでしょうか?

ダウンロード

先頭へ