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愛加あゆ凱旋公演 - 宝塚歌劇雪組『若き日の唄は忘れじ/ナルシス・ノアールII』

パレードの衣装(花組)
パレードの衣装(花組)

8月29日にオーバード・ホール上演された宝塚歌劇雪組全国ツアー富山公演『若き日の唄は忘れじ』(脚本:大関 弘政、演出:大野拓史)、『ナルシス・ノアールII』(作・演出:岡田敬二)を観劇してきました。

富山市出身で、平成24年12月にトップ娘役に就任した愛加あゆさんにとっては、初の凱旋公演。愛加さんの姉も星組のトップ娘役の夢咲ねねさん。姉妹同時のトップ娘役就任はおそらく宝塚史上初めてです。

雪組は、平成24年3月の『ドン・カルロス/Shining Rhythm!』以来ですが、そもそも宝塚歌劇にはまったのが、平成21年11月の雪組全国ツアー富山公演『情熱のバルセロナ/RIO DE BRAVO!!』でしたので、大変思い入れのある組です。

若き日の唄は忘れじ

『若き日の唄は忘れじ』は藤沢周平原作の時代小説「蝉しぐれ」をミュージカル化したもので、宝塚ではたびたび再演されている名作で、映画化や舞台化もされています。

海坂藩という地方の小藩を舞台に、下級武士の家に生まれた若者牧文四郎(壮一帆)と同じ下級武士の娘おふく(愛加あゆ)との淡い恋と、お互いにお家騒動に巻き込まれて決して結ばれることのない運命を描いた物語。

藤沢文学独特の空気感を壊すことなく、壮さんと愛加さんを中心に、日本ものの雪組といわれるだけあって、とても落ち着きのある舞台となっていました。

愛加さんとともに雪組トップスターに就任した壮一帆さんは、10代の少年剣士時代の芝居・唄がまさに少年そのもの。お家騒動に巻き込まれてからの、苦悩を抱え込んで苦しみながらもそれらを飲み込んで生きていく大人のとの演じ分けが抜群でした。コミカルな役から悪役、主人公の親友役など幅広い役を見事に演じてきた花組時代の長い2番手経験が生きているのでしょう。

愛加あゆさんは、壮さんの前任トップスター音月桂さんのトップスター就任プレお披露目公演の『はじめて愛した』でヒロインを演じて(このときはまだトップ娘役が未定)、いよいよトップ娘役就任か?と思ったものの、結局トップ娘役は別の方に。

その後は、演技力が要求される強い個性の役どころが多く、いわゆる別格娘役へとなるのではと思いましたが、前任者の退団に伴い満を持しての就任となりました。

原作ではもっと幼いはにかみ屋さんという感じでしたが、宝塚版ではしっかりもののおふくという設定に感じました。流石にキャリアのある愛加さんは、娘時代は可愛く、藩主の側室時代はたおやかな大人という具合に、安定感のある芝居と歌でヒロインを難なくこなしていました。

陰謀に巻き込まれて殺された文四郎の父の遺体を大八車に乗せて二人で運ぶシーンは涙を誘います。また、終盤浜辺での二人の最後の逢瀬は静かに上品に切なく儚いこの芝居の見せ場。説得力のあるお芝居に深く感動しました。

ナルシス・ノアールII

ロマンチック・レビューシリーズの名作の再演ですが、最近の宝塚のショーは、派手でダンサンブルなものが多く、しっとりとした古典的なショーはかえって新鮮でしたし、岡田敬二先生のナルシス・ノアールの各場面は、他のショーでもちょくちょく使われるので、なじみのナンバーも多くて、あきることのない場面の連続でした。

クラシカルな感じが二人のトップコンビにとても似合っているように感じました。

愛加さんは決してダンサータイプではないのですが、デュエットダンスではしなやかなスカートさばきで魅了してくれました。また、さすがは元アイドルをやっていただけあってか、華やかで娘役としては抜群の可愛いルックスの持ち主でありながら、安心して舞台を見ていられる安定した技術も持ち合わせています。

実力者、壮一帆さんとのコンビがますます楽しみです。

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