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蘭乃はな、娘役の集大成。『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』 - 宝塚歌劇団花組公演

エリザベート公演パネル
エリザベート公演パネル

宝塚歌劇団花組公演のミュージカル『エリザベート』を東京宝塚劇場で観劇しました。

この作品は、オーストリア帝国最後の皇后エリザベートを主人公にしたウィーン発のミュージカル(脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ、音楽/シルヴェスター・リーヴァイ、オリジナル・プロダクション/ウィーン劇場協会)を、小池修一郎が潤色・演出し宝塚歌劇団が日本初演をはたした名作。

新トップスター明日海りおさんの大劇場お披露目公演であり、トップ娘役の蘭乃はなさんの退団公演でもあります。

開演前の様子
開演前の様子

水夏希さん率いる雪組全国ツアーを富山で観たのがきっかけとなり、さらに、水さんのトップお披露目公演『エリザベート』のDVDを何度も繰り返し観たのが決定打になって今に至っているので、私にとっては特別な作品の劇場での初観劇。

幕開けと同時に、瀬戸かずやさんの声で「被告ルイジ・ルキーニ、テロリスト!...」という裁判官の影台詞が劇場内に響き渡り、この物語の狂言回しであるルイジ・ルキーニ(望海風斗)が登場すると、一気に興奮度が高まります。

DVDで色んな組のエリザベートを観てきましたが、望海風斗さんのルキーニが実にいい。

冒頭の登場シーンと最後の審判のシーンでは確かに主人公であり人々の死をつかさどる黄泉の帝王トート閣下(明日海りお)に操られている感じですが、そのほかの場面では、むしろトートさえも操っているのではないかというくらいの、圧倒的な存在感。

オーケストラの指揮者ならぬ、出演者の指揮者のようであります。壮一帆さんが移動後の『オーシャンズ11』から、実質2番手として様々な役をこなしてきた経験が活きているのでしょう。

この作品のフィナーレでの男役群舞では、特別出演の北翔海莉(フランツ・ヨーゼフ役)さんとともに、これぞ花組男役のダンスで、群舞を引っ張りました。正直鳥肌もので、ちょっとしたタイミングの取り方に、前トップスター蘭寿とむさんの面影を感じながら観ておりました。

この作品を最後に雪組へ移動しますが、いつでもトップになれるスターだと感じました。

そして、大劇場でのトップお披露目公演となる明日海りおさんは、歴代No.1の美しさで登場。その歌唱が劇場内に響き渡りました。

初めて明日海を観たのは『アルジェの男』でしたが、アナベルという盲目の貴族令嬢を静かに見守る従者アンリ・クローデル役で、ほとんど台詞がないのに登場しただけで空気が変わる。本物のスターだと感じました。

さて、歴代トートとは異なり、ナイーブで優しい少年のようなトートで、黄泉の帝王というより黄泉の国のプリンス。ただ、そ人柄がにじみ出た分、トートの分身でもある黒天使と一緒の場面では、彼らに埋もれてしまう感じもあり、美貌を活かすためにメイクや鬘、衣装にもっとインパクトがあれば(『戦国BASARA』の上杉謙信の時のような派手な衣装でも衣装負けしない方なので、勿体ない。)よかったか...

蘭乃はなさん
蘭乃はなさん

そして、タイトルロールであるエリザベート(愛称シシィ)を演ずる蘭乃はなさんは、この作品で卒業されます。正直、蘭乃はなさんがいなかったらここまで宝塚にのめり込んでいたかどうだか判らないくらい大好きな娘役さんです。

本音を言えば、歌唱が得意ではない蘭乃さんにエリザベートの楽曲が歌いこなせるか不安だったのですが、シシィがまさにエリザベートになるための「私だけに」という名曲の歌唱にただただ感動。大劇場公演では地声のパートで幼い声になってしまうところもあったのですが、東京公演ではまさにエリザベート。

鏡の間から紗幕が上がって登場する場面の神々しさや、皇太子ルドルフ(芹香斗亜/柚香光役替わり。わたしの観た回は何れも柚香光さん)がハンガリー皇帝を夢想する場面では、母としてのエリザベートの微笑み。

蘭寿とむさんとのコンビで数々の名ダンスシーンを生み出してきた素晴らしいダンサーとして応援してきたファンとしては、ショー作品のない一本もののミュージカルで退団されることに疑問がなかったわけではありませんが、この公演を観て、トップ娘役として集大成となる演技と歌になったことに感動をしています。

白羽さんと花總さん
白羽さんと花總さ

以前、このエリザベートを2度も演じた花總まりさん主演の退団後のミュージカル『ドラキュラ』を観て、「なんて歌の迫力が増したのだろう!」と感動したことがあります。

写真の左側が、前述の雪組公演のエリザベート役白羽ゆりさん、右側が花總さんです。

もちろん花總さんは歌に感情を乗せるのがとても上手い方でしたが、現在の宝塚は公演回数がとても多く、また、主役級になればなるほど登場場面が多くて、歌、ダンス、芝居の舞台稽古が多くて、それぞれの分野を集中して稽古することが出来ないというOGの方の発言を聞いたことがありますが、トップ娘役は男役に比べ、かなり若い学年で技術が伴わないまま主役となるケースが殆どです。

最近では、ある程度学年を重ねて完成形でトップ娘役に就任されたのは、先ごろ退団された愛加あゆさんくらいでしょうか?

そんな中で、2作続けて一本もののミュージカル作品で歌とお芝居に集中できたという事もあるのでしょうが、退団のその時まで技量を高めることを続けてこられた蘭乃さんの姿勢に感服しました。

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