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Headway(ヘッドウェイ)HJ-908と百瀬恭夫と中島みゆき

オリジナルのHeadway HJ-908
オリジナルのHeadway HJ-908

Headway(ヘッドウェイ)と百瀬恭夫という名前は、ギターをある程度弾く人なら知っている方も多いと思いますが、僕は、まだアコギを再開する前、中島みゆきの情報をネットで検索している時に、ヘッドウェイギターの愛好家が集うサイトで、彼女が1981年ころに使っていたギターがヤマハではなくてヘッドウェイだったことを知り興味を覚えたのが最初でした。

初めて観た1980年のツアー舞台写真によれば、ヤマハN-1000で間違いないのですが、翌年のツアーからヘッドウェイだったのかな?

使っていたのはHJ-908というGibsonみたいな(一応、バンドマンとして、ストラトとレスポールの区別がつくくらいには、Martin系とGibsonの区別はできました)モデルで、確かに手持ちの楽譜なんかにそれらしい写真が出ていました。

価格帯としてはプロが使うギターではなかったような気もしますが、中島みゆきという人はブランドとか趣味的な意味でのギターには、おそらく興味がない人だろうという気がします。

70年代は2時間のコンサートを弾き語りでやっていましたし、レコードでも彼女の弾き語りのみの曲も結構ありますし、ギターテクニック的には、なかなかのものだと思うのですが...

演奏の特徴としては、ルート音というよりベースラインをしっかり弾いて、その上にコードが乗っかることが挙げられます。そして、レコードではほかの楽器が演奏しているフレーズをギターでベースラインとコードを弾きながらさらりと乗っけるあたりは、上手い人なんだなぁと思うわけであります。

ところが、イルカさんだとMartinD-35だとか、さだまさしさんだとMartinD-45とかヤマハの特注モデルみたいな、ギターにこだわっているイメージがありますが、不思議と中島みゆきという人にはそれがないんですよね...

話を戻すと、そのギターを製作していたのが百瀬恭夫というギター職人(当時はルシアーという言葉は知らなかった)だということをメーカーのサイトで知ったわけです。

そしてHJ-908というモデルはカタログには記載がないし、愛好者のサイトによれば所有者によって仕様が違うという情報があり、謎めいたギターだという印象も持って、当時ギターを弾いていなかったくせに、ヘッドウェイHJ-908と百瀬恭夫は、いつしかあこがれの存在になっていました。

ギターを弾くようになって、たまたまHJ-908Reという復刻版を所有することになるのですが、オリジナル版は一生実物を目にすることはないだろうと思っていたら、偶然夜中に眠れなくてネットを覗くと、あの幻のオリジナル版HJ-908が出品されていて、居ても立っても居られなくなり...

HJ-908オリジナル(左)と復刻版(右)
HJ-908オリジナル(左)と復刻版(右)

こうして並べると、オリジナルがロングスケールなのに対して復刻版はショートスケールだということがわかるでしょうか?また、ロゴの太さが若干違うほか、ボディエンドの処理も違います。

オリジナル(上)と復刻版(下)
オリジナル(上)と復刻版(下)

このほかは、ペグがオリジナルがクルーソンタイプ2こぶつまみタイプであるのに対して、復刻版はGOTOH製のオープンバックギヤになっています。

2コブのクルーソンタイプのペグ
2コブのクルーソンタイプのペグ

で、このHJ-908ですが、先ほど書いたように仕様がまちまちで、表板はスプルースでサイド&バックはマホガニーなのですが、割れ止めがあったりなかったりでオール単板と合板モデルが混在しているとか、ヘッドロゴが数パターンあるとか、ペグも何種類かあるとか(後で替えられた可能性もありますが)で、謎多きギターです。

カタログになかったのは、百瀬さんがヘッドウェイを立ち上げたときにMartinのギターを分解して徹底研究したMartinレプリカを製作・販売していたようですが、ヘッドウェイを立ち上げる前に在籍していた林楽器で、フェルナンデスのバーニーというブランドから、Gibson系の人気モデル(BJシリーズといって、百瀬さんがヘッドウェイに移籍してからは春日楽器が製作していたらしいです)を製作していたらしく、この評判が良く、その流れから、ショップオーダーのカスタムモデル的な位置づけだったのかな?と推察しています。

内部のラベル
内部のラベル

取り扱い説明書も付属していました。ミディアムゲージ仕様だったみたいです。

取り扱い説明書
取り扱い説明書
HJ-908のバック
HJ-908のバック

バックもマホガニー単板。写真は撮れませんが、サイドも内側に割れどめがあるので単板かな?

HJ-908のサイド
HJ-908のサイド

ほとんど弾かれないまま放置されていたのでしょう。弦は錆びついて、フレットやペグなどの金属パーツもくすみが相当ありましたが、丹念に磨いて新しい弦を張ってやりました。

チューニングするだけで、ヘッド部にしっかりと響いてきます。

ストロークで強く弾いても暴れず、Gibsonとはまた異なる上品な(-_-;)ジャキジャキ感です。音色を言語化するのは困難な作業ですが、復刻版よりもスケールが長いからか、あるいは40年以上前のギターだからなのか、全体に艶っぽく、音の重心が低音側にあるような気もしました。

12フレット上6弦側で2.8mmと、ちょっとだけ弦高が高いので、そのうち調整に出したいと思います。

2台持ちもできないので、復刻版の方は手放しました。それはそれで好きなギターであったので大事に使ってもらえたらありがたいな。

参考までに主要緒元を掲載します(メーカー発表情報ではありません)。

弦長644mm
ナット幅43mm
表板スプルース単板
裏/側板マホガニー単板
ネックマホガニー
指板・ブリッジローズウッド
ブレイシングノンスキャロップXブレイシング
ペグクルーソンデラックスタイプ2コブつまみ
製造時期1980年(シリアル番号から推定)
発売当時の定価80,000円

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