ブログ

請願・陳情はどうあるべきか - 正副議長研修会(2)

本会議場
本会議場

議会報告会はどうあるべきか - 正副議長研修会(1)の続きです。

平成28年9月に議会運営委員長に就任して取り組んだ議会改革の一つに、請願・陳情の制度の明確化でした。それまで陳情について明確な規定がなかったため、請願に倣って規定を整備しました。また請願についても請願者の願意をできるだけ汲み取ることができるよう、採択、不採択に加え、一部採択とするこも採用しました。

一方で、一部の会派からは、議会基本条例の制定も視野に入れつつ、請願者の意見陳述の場を制度として設けるべきとの提案が、議会改革検討調査会で提案されました。一見なるほどと思える提案ですが、現行制度でも可能であるとして提案は採用されませんでした。

今回の研修でも、「地方自治法に則り、必要と認められる場合に請願者に対し参考人として意見を聴くことにしなければ、法を逸脱して『何人にも議会や委員会での発言を認める』ということになってしまう」との指摘がありました。

今回の講義内容(請願者の意見陳述ではなく、参考人として意見を述べさせること)については、後記の根拠法が示されました。

ここでは、請願について、一般法としての位置づけと特別法における位置づけについては論じませんが、既存の法や条例の中で活用できる制度がありながら活用してこなかったものについて、もう一度点検しなければいけないと考えます。また、冒頭のべたように、既存の条例・規則の改善で対応することが出来るものについても十分検討したのか?そのプロセスを経ることなく安易に基本条例に走ってはいないか?十分議論をしてまいりたいと思います。

なお、請願審査の過程において、「請願者の願意が議会に伝わるような助言を、晴眼者に対して紹介議員はすべきではないか?」「いや、請願権は憲法に保障されている、紹介議員について注文を付けるのはおかしいのではないか?」という議論がありました。

紹介議員に対して様々な意見が出るのは、請願者の立場に立って他の議員に対して採択を促すための賛成討論をするのと同様に、採択しやすい文章となるように工夫することを専門的知見を活かしてな助言することを指摘しているのであって、紹介議員になることを妨げたり、請願すること自体を否定しているものではないと考えます。

参考:根拠法

地方自治法

第百十五条

(1項省略)

2 民事訴訟に関する法令の規定中証人の訊問に関する規定は、この法律に特別の定があるものを除く外、前項の規定により議会が当該普通地方公共団体の事務に関する調査のため選挙人その他の関係人の証言を請求する場合に、これを準用する。但し、過料、罰金、拘留又は勾引に関する規定は、この限りでない。

(3項以下省略)

地方自治法第百十五条の二

(1項省略)

2 普通地方公共団体の議会は、会議において、当該普通地方公共団体の事務に関する調査又は審査のため必要があると認めるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができる。

請願についての根拠法は次の通りです。

日本国憲法第十六条

何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

請願法

第一条 請願については、別に法律の定める場合を除いては、この法律の定めるところによる。

第二条 請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し、文書でこれをしなければならない。

第三条 請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない。

2 請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは、請願書は、これを内閣に提出することができる。

第四条 請願書が誤つて前条に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは、その官公署は、請願者に正当な官公署を指示し、又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない。

第五条 この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。

第六条 何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

地方自治法

第百九条 (1項省略)

2 常任委員会は、その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、議案、請願等を審査する。

3 議会運営委員会は、次に掲げる事項に関する調査を行い、議案、請願等を審査する。

(以下省略)

第百二十四条 普通地方公共団体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。

第百二十五条 普通地方公共団体の議会は、その採択した請願で当該普通地方公共団体の長、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、労働委員会、農業委員会又は監査委員その他法律に基づく委員会又は委員において措置することが適当と認めるものは、これらの者にこれを送付し、かつ、その請願の処理の経過及び結果の報告を請求することができる。

請願を受けた官公署の回答義務についてはないとされる判例が示されています。

なお、回答義務について、東京高裁平成23年6月8日(平成23年(行コ)第30号)は「請願をしたことにより、請願者と請願を受けた官公署との間に、特別な公法上の法律関係を生じさせるものではなく(請願者による官公署に対する希望、意見、提言等の陳述に過ぎない。)、また、請願者に対し、当該官公署に請願の内容について審理を求め、あるいは、その採否や結果の通知等を求める権利を生じさせるものではない」と同時に、「請願法5条に規定する誠実処理義務は、官公署の事務処理上の行為規範に過ぎないから、官公署は、請願を受理した場合でも、請願者に対して請願処理手続上の義務を負うものではない」という判断を下している。

富山市議会では請願の取り扱いについては、次の富山市議会会議規則によるほか、富山市議会請願・陳情取扱要領に具体な手続きを定めています。受理そのものの拒否をめぐる行政訴訟もあるようですが、富山市議会では法や公序良俗に反する行為を求める様な内容でなければ、受理され、所管する委員会にて審査されます。

審査基準は

  1. 採択...願意が妥当であり、かつ、実現の可能性があるもの
  2. 一部採択...内容が数項目に分かれているときで、一部容認できるものがあるもの
  3. 不採択...実現の見込みが困難と認められるもの及び採択することが不適当と認められるもの

となっているほか、継続して審査が必要な場合は、継続審査となります。

ダウンロード

先頭へ