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研修報告 - 「議員の資質向上と処遇」ならびに「自治体議会と住民」について

研修会資料
研修会資料

平成30年7月31日(火)と8月1日(水)の二日間にわたり貿易センタービルWTCコンファレンスセンター(東京都港区)で開催された、高沖秀宣(三重県地方自治研究センター上席研究員)さんを講師とした研修会に参加しましたので、そのうち二日目の「議員の資質向上と処遇」ならびに「自治体議会と住民」と題した研修について簡単に報告します。

  1. 「議員の資質向上と処遇」(8月1日午前)
    1. 議員に求められる役割・資質について・・・「単に議員個人の資質や能力を高めるだけでは議会という機関としての力の向上にならないし住民のためにもならない。一人会派・少数会派であっても、議会全体の合意(過半数)を得る調整能力が求められる。」との指摘があり同感である。これは多数会派の議員であっても同様だと考える。
    2. 質問力の向上について・・・講師指摘の通り、個人の一般質問を重視するあまり、議会としての政策立案と実現に向けた過程を軽視してはいけないと感じた。また、質問に対する追跡調査を議員が行うのではなく、議会として報告させる議会が紹介されたが、議員個人の政策提言である一般質問を議会全体の政策提言として昇華させる取り組みは、注目に値する。
    3. 政策立案の仕方について・・・予算措置が必要な条例であっても、執行側との調整は必要だが、議会が立法し、首長に執行させるのだという観点に立てば、何ら問題はない。ただし、議会側も条例化に伴う所要額について調査しなければならないと指摘された。その場合は、外部の知見を活用する体制づくりが必要と感じた。
    4. 政務活動費の適切な使用について・・・講師のこれまでの主張通り、法改正があったが「調査研究」が主たる使途用途であるから、支出のバランスを考えるべきとし、様々な議会の収支報告書を資料に、広報・広聴費や人件費に偏っている会派の問題点を指摘されたが、全く同感である。また、後払いについても、本来は前払いとすべきで、後払いにしたからと言って不正がなくなるわけではないと、問題点を指摘された。
    5. 議員の処遇について・・・議会力を弱める定数削減は議会改革ではない。議会は行政ではないのだから、行政改革の一環として定数削減を行うのは間違いである。さらに、外国の地方議員の報酬体系を引き合いに、議員報酬削減を論じるのも、そもそも地方議会の制度が異なるのだから間違いであるとの指摘には同感である。なお、議員年金については、何らかの方策が必要との見解であった。
  2. 「自治体議会と住民」(8月1日午後)
    1. 住民参加型議会の構築について・・・講師は、地方議員は専門性を持った選任であるべきである。だからこそ住民参加の促進が必要である。しかしながら、夜間議会の開催や休日議会の開催などは、議員報酬の項でも記述したとおり、専任制をとらない外国の地方議会制度を形式的にまねたものであり、住民参加の意味が全く異なる。このことを考慮しなければ、真に住民参加の議会とはならないであろう。住民参加型議会の具体例として、「戦略的議会運営」の項目で記述したした通り、参考人制度・公聴会制度の活用や、請願・陳情における提出者の意見陳述の制度化や、議場外の住民参加の制度として、公募した住民(政策サポーター)と議員による政策討議の開催などの提言があった。
    2. 議会報告会・住民意見交換会について・・・旧来型の議会報告会・住民意見交換会については、特定の者による一方的な主張の場になりやすいことや、参加者の減少や特定の階層に偏るなど、先進的議会と呼ばれる議会も苦慮している現状がある。従来型の報告会・意見交換会を改めて、本市における「出前講座」のような形式で議員を派遣する方法や、グループディスカッション形式での開催を行うなどの事例が紹介された。
    3. 住民からの政策提言の活用・・・請願・陳情を政策立案のネタとして積極的に活かすべきとの指摘があった。本議会においては、条例制定につながる政策提言的な内容よりも、行政への苦情や議会改革、政府に対して意見書を採択することを求める請願・陳情が多く、請願・陳情に関する規則の改正が活かされていないのが現状で、請願・陳情の政策的活用についての項で記述したとおり、政策的課題については、議会として民意をくみ取る制度があることを住民等に対して周知しなければならないと考える。
    4. 議会・議員活動の評価について・・・議会・議員活動の評価を制度として実施している実例が紹介された。実施する場合は自己評価だけではなく、外部評価を行うとともに、外部の知見も活用し改革を進める必要性がある。
    5. 住民(有権者)改革・・・来春は18歳選挙権が施行されて初めての統一地方選挙となるが、教育委員会や選挙管理委員会まかせの主権者教育だけではなく、議会という機関として果たすべき役割について検討しなければならないと考える。また、議会力を高める手段として議会改革を進めるには、議会だけが改革するのではなく、住民(有権者)改革も必要であると考える。

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