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地域医療政策セミナー - 全国自治体病院経営都市議会協議会主催

11月1日に全国自治体病院経営都市議会協議会が主催する「地域医療政策セミナー」に参加してまいりました。

長島仁講師
長島仁講師

セミナーは、『「崖っぷち」自治体病院~北の大地で経営改革を目指して~"北の1億円男"と呼んでください!』と題して、開設以来赤字経営が続く市民病院の立て直しをされた、士別市立病院事業管理者・院長の長島仁先生と、『看取り率76%新たな看取りの場として機能するサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀」の挑戦』と題した(株)シルバーウッド代表取締役下河原忠道さんのお二人によるものでした。

1.『「崖っぷち」自治体病院~北の大地で経営改革を目指して~"北の1億円男"と呼んでください!』講師:士別市立病院事業管理者・院長 長島仁

開業以来慢性的な赤字となっていた士別市立病院の経営改善に取り組み、単年度収支の黒字化と一般会計からの繰入金の大幅削減に成功した事例から、公立病院のありかたについて学びました。具体には、

  1. 医療需要は既に減少しているが介護需要は2025年がピーク。高齢者医療では医療と介護の区別はなく、治療だけが医療行為ではない。患者に寄り添い喜ばれることが公立病院の役割である。
  2. 地域の医療需要を正確にとらえ、急性期診療中心の病院から慢性期診療中心の病院へ移行するとともに、隣接する名寄市民病院に急性期を任せる連携を行うことで患者数を増加させた。ただし、完全に急性期を止めたわけではなく、公立病院として市民感情とのせめぎ合いのなかで病院の位置を確立する必要がある。
  3. 経費削減の要因として、急性期医療を行う公立病院の職員であるというプライドが原因で職員が辞めるケースがあったが結果的に看護師の適正配置に繋がった。また、高額の報酬を払って院外の専門医により急性期医療を提供していたが、自前の医師で治療を行うこととし、人件費を削減。

これらのことから、

  1. 病院の老朽化や逓信病院の取得など、本市における病院事業は変革期を迎えており、医療圏における将来需要や医療の在り方をふまえ既成概念にとらわれることなく議論すべき。
  2. 医療と介護の連携についてさらに進める必要がある。
  3. 医療需要がピークアウトする時期を見越した医療圏内の病院機能の分担についても今から議論すべき。

と考えます。

2.『看取り率76%新たな看取りの場として機能するサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀」の挑戦』講師:(株)シルバーウッド代表取締役下河原忠道

下河原忠道講師
下河原忠道講師

サービス付き高齢者住宅を地域包括ケアの中心にすえて異業種参入したケースから、目指すべき介護とは何かを学んだ。例として入居者自身が駄菓子屋などを運営するほか、地域を巻き込んでのイベントを運営することなど、単にサービスを受ける側からの脱却を実践していました。具体には、

  1. 入居者の自立により介護保険を利用せずに生活が継続出来るのがサービス付高齢者住宅であり、介護の場ではなく生活の場として利用者の自主性や自己決定権を大切にすべき。
  2. また生活の場であるからには同時に多様な介護度の方が入居し多様なコミュニティーを構成することが必要。また、重度の方ばかりでは介護職員の疲弊につながる。

このほか、VRによる認知症入所者の一人称体験ができるシステムの紹介などもありました。

これらのことから、

  1. 過度な介護をしない、利用者の自己決定権を尊重する方針は、認識されつつあるものの、現場を変えることへの不安から実践例はまだまだ少ない。国はもちろんだが、本市も行政として介護現場を変えることに取り組まなければ、利用者の満足度はもちろん、結果として従事者の疲弊とり離職者の増大、保険料の増大などによるサービス低下と制度の破綻につながるのではないか、
  2. またこのことを介護保険制度の制度設計の問題から切り離して、基礎自治体の役目ととらえなおす必要がある。

と考えました。

自己決定権の尊重や過介護については、「高齢者介護の課題 - 海外との比較」という記事で、厚労省母子家庭自立支援事業評価委員をつとめるの千葉喜久也仙台大教授が講師をされた研修の記事を掲載していますので、そちらも併せてごらんください。

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